比叡 京都 広島 東京 日本橋

とそうだ。青い絨毯を敷き詰めたように、広がっている比叡の山腹が、灰色に蒼茫と暮れ初むる頃になると、俺はい

桑田は、俺が彼らの圧迫に堪らなくなって、京都へ来たのだと思うかも知れない。が、どう思われたって

とうとう京都へ来た。山野や桑田は、俺が彼らの圧迫に堪らなくなっ

にひきつけてしまった。俺は京都が好きになった。京都へ来たことは決して後悔はしない。

俺の心を初秋の京都にひきつけてしまった。俺は京都が好きになった。京都へ来たことは決して後悔はしない。

ような、その新鮮な情景が、俺の心を初秋の京都にひきつけてしまった。俺は京都が好きになった。京都へ来た

その上に、俺は京都そのものが気に入った。ことに今日、大学の前を通っていると

連中を離れて、文壇に出るのには非常に不利な京都に来てしまった。それには経済上の理由もあった。が、他

いわせてやることも、決して不可能でない。俺が、京都へ来た理由は、そういう点にもいくらかある。

見込みが、朧げながらあった。それは中田博士が、京都の文科の教授であることであった。博士は、もうよほど、文壇の

取り残された場合にも言い訳はいくらでもある。また、京都に来たために、文壇に出る機会が、かえって早められるかも知れぬ

も、俺にとってどれだけいいことかわからなかった。京都に来て、彼らとまったく違った境遇におれば、彼らに取り残さ

会った。高等学校では、俺より一年上で、やっぱり京都の文科に来ているんだ。吉野君と話してみると、文壇に

威圧されると同時に、一種の頼もしさを感じた。京都にもこうした真摯な作家がいるのだ。恐らくこの男の名前は

（どうだい！　ばかに黙っているね。京都にも、少しは文学らしいものがあるかい。僕たちこっちにいる連中

いたよりも以上に、この手紙は俺を傷つけた。京都へ来てからまだ半年にもならない間に、俺と東京に残した

それについては君だが、僕たちは、君が京都で独りぼっちでいることに対し大いに同情をしている。『×××』

「どうだろう！　富井のやつ、京都で何をやっているのだろう。相変らず例の甘い脚本か何か

いるのだろう。ことに俺のクラスのやつらはひどい。広島の高師を出てきたという男は、昨日教師が黒板に書いた

てやるのだ。研究という点においては、決して東京の連中に負けはしないと、俺はあの研究室を見た時に、

真赤な木の実が、いくつも流れ下っているのを見た。東京の街頭などでは、夢にも見られないような、その新鮮な情景

にはそんなものが、ちょっとありそうにも思われない。東京にいる頃は、山野や桑田や杉野などに対する競争心から、俺でも

てみても、淋しいことに相違なかった。俺は、東京にいて、山野や、桑田などと競争的になるのが、不快で

さの裏には、激しい焦躁の心が潜んでいる。東京にいる山野や桑田などが一日一日どんなに成長しているかを考える

俺は、今日東京の山野から、不快きわまる手紙を受け取った。それは、俺に挑戦し、

へ来てからまだ半年にもならない間に、俺と東京に残した友達との間に、早くもある間隔が作られつつあること

そこへひょっくり吉野君が訪ねてきた。俺は、早速東京の連中が、同人雑誌を出すことを話した。俺の口調はまったく平静を

をぜひ同人に入れなければならないのだが、君が東京におらぬため、ついいろいろ差支えがあって、やむなく君を入れることができ

付くだろう。三月の一日に初号を出す。出版元は日本橋の文耕堂だ。もう、皆は初号の原稿に忙しい。締切は一月