ある恋の話 / 菊池寛

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地名一覧

江戸

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十七の歳に深川木場の前島宗兵衛と云う、天保頃の江戸の分限者の番附では、西の大関に据えられている、千万長者の

たとみえて、色々面白い昔話をしてくれました。江戸の十八大通の話だとか、天保年度の水野越前守の改革だとか

今で云えば鴈治郎と云ったような役者の一座で、江戸に下ったのだが、初めは、江戸の水に合わなかったと見えて

の一座で、江戸に下ったのだが、初めは、江戸の水に合わなかったと見えて、舞台へ出てもちっとも見物受がし

、出立の日が近づいて来るのであります。私は江戸に深い執着も持っていませんが、ただ貴女のお眸の謎を―

――貴女の本当のお心持を――解かないで、江戸を去るのが、如何にも心残りであります。今まで、私の舞台をあれほど

私はそのお言葉を、何よりの餞別として、江戸を去る積りであります。又、貴女のお口から、お前を愛しては

聞いても私はやっぱり、何よりの餞別として、江戸を去りたいと思うのです。どうか、私の一生の願を聞いてやる

青山

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してはいやよ。お祖母さんもお祖母さんだ、青山の家へばかり行って』などと、妻の姉妹が、不平を滾すほど

両国

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猿若町の芝居の話だとか、昔の浅草観音の繁昌だとか、両国の広小路に出た奇抜な見世物の話だとか、町人の家庭の年中行事だとか、色

深川

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結婚は頗る不幸な結婚でありました。十七の歳に深川木場の前島宗兵衛と云う、天保頃の江戸の分限者の番附では、

蔵前

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(例)蔵前

―略さないで云えば、山城屋長兵衛の一人娘でした。何しろ蔵前の札差で山長と云えば、今で云うと、政府の御用商人で二三百万

云って、もう三四年前に死んだ人ですが――蔵前の札差で、名字帯刀御免で可なり幅を利かせた山長――略さない

になったかならないかの十四五の時から、蔵前小町と云うかまびすしい評判を立てられたほどあって、それはそれは美しい娘

向島

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見え、癒しがたい男嫌いになってしまったのでしょう。祖母は向島の小さい穏かな住居で、維新の革命も彰義隊の戦争も、凡て対岸

降るように来る縁談を斥けて、娘を連れたまま、向島へ別居することになりました。そして、心置きのない夫婦者の召使いを

しまったのです。その話は幾度もしたけれど――向島へ行って何年目だろう、私が何でも二十四五になっ

、大きくなるまでは、世間とも余り交際しない積りで、向島へ若隠居をしてしまったのです。その話は幾度もしたけれど―

東京

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なりました。妻の姉妹は三人もあって、銘々東京で家庭を持っているのですが、彼等の共通の祖母が、私

浅草

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か、浅草の猿若町の芝居の話だとか、昔の浅草観音の繁昌だとか、両国の広小路に出た奇抜な見世物の話だ

とか、天保年度の水野越前守の改革だとか、浅草の猿若町の芝居の話だとか、昔の浅草観音の繁昌だとか

のです。私が恋したその役者と云うのは、浅草の猿若町の守田座――これは御維新になってから、築地に移っ

のように守田座へ行きたくなったのです。それで浅草へお参りに行くと云っては、何も知らない頑是のない綾ちゃん達