宮川町 三条 四条 江戸

お梶は、もう四十に近かったが、宮川町の歌妓として、若い頃に嬌名を謳われた面影が、そっくりと白い

が、そなたを見たのは、あの時が初めてじゃ。宮川町のお梶どのと云えば、いかに美しい若女形でも、足下にも及ぶまいと

、毎日のように都の街々を過ぎた。彼等は三条の旅宿に二三日の逗留をして、都の春を十分に楽しむと、また

美しいかと云う物争いは、二十年の昔には、四条の茶屋に遊ぶ大尽達の口に上った事さえある。その頃からの馴染

暢びやかな声までが春らしい心を唆った。江戸へ下る西国大名の行列が、毎日のように都の街々を過ぎた。彼

名人であった。二人は同じやつしの名人として、江戸と京との歌舞伎の為にも、烈しく相争わねばならぬ宿縁を、

「江戸の名人じゃ、と云う程に、何ぞ珍らしい芸でもするのかと思っ

「江戸の少長は、評判倒れの御仁じゃ、尤も江戸と京とでは評判の

「江戸の少長は、評判倒れの御仁じゃ、尤も江戸と京とでは評判の目安も違うほどに江戸の名人は、京の上手

、尤も江戸と京とでは評判の目安も違うほどに江戸の名人は、京の上手にも及ばぬものじゃ。所詮物真似狂言は都の

舞台を見た時に、彼は心の中で窃に江戸の歌舞伎を軽蔑した。彼は、団十郎が一流編み出したと云う荒事を見

「太夫様、団十郎の芸をいかが思召さる、江戸自慢の荒事とやらをどう思召さる」と訊いた時、彼は慎ましやかな苦笑