本郷 東京市 吾妻橋 長崎 銀座 東京 神田 大宮 田原町 京橋 隅田川

の小池堅治氏へ同氏の著書出版の交渉經過に就き、本郷の北岡壽逸君より亡妻追悼録を贈られた謝禮、その他俗用の

絛たる小さはしい雨だ。正午過妻とともに本郷の喜福寺へ急ぐ。一時から二時過ぎまで井汲清治、和木清三郎、勝本清一郎

た女中殺しのためだが、住み馴れて既に二十六年、東京市内にもこんな閑靜な好ましい屋敷町はさうあるまいと思つてゐたほど

のに驚いて腰をぬかした話。いつしか蒸汽は吾妻橋へ着いてゐた。

だつたであらう。それにしても、自分の少年期の長崎時代の思出に漸く殘る粗末な感じの座棺に收められて、その人

告げて銀座へ出た。資生堂で簡單に夜食。暫く銀座通を散歩したが、冷冷とした夜氣の肌寒さに不安

、同じく弔問に來た佐佐木茂索とともに暇を告げて銀座へ出た。資生堂で簡單に夜食。暫く銀座通を散歩したが

「銀座へ參りませう？」と、自分は更に先生をお誘ひして自動車

がもつと滿足だつたら聊か憾みだつたが、それから銀座の資生堂で簡單な夕食をとりながらお話を伺つてゐる内に喘息

福原信辰、それに今は亡き宇野四郎等と先生ともどもに銀座へ歩き出たりした事は幾度かあつたが、その頃から殆ど二十年

た女中殺しのためだが、住み馴れて既に二十六年、東京市内にもこんな閑靜な好ましい屋敷町はさうあるまいと思つてゐ

交へてゐると、突然東日社から倉島君へ電話。神田七段の昇段問題で日本將棋聯盟に紛擾起り、分裂の危機に頻すと

と思ひ立つて家を出る。電車通で息子さんを連れた大宮春枝夫人に會ふ。息子の勉強の事で今お宅へ御相談に

へ。相變らずいろいろとお話を伺ひながら、やがて田原町へ出た。

來があつたので、お約束のまま午後一時に京橋の明治製菓賣店の前で先生と落ち合ひ、すぐ本所工場へ向つた。

で工場を出ると、馬場先生と自分とは厩橋あたりの隅田川岸へ出て、川沿ひに兩國の方へ歩いて行つた。先生と

過ぎぬとは何といふ佗びしさか？　その頃の隅田川岸と言へば自分の記憶にもぼんやり浮ぶが、低い家の立ち並んだ薄暗い

の袂で先生と自分は一錢蒸汽に乘つた。隅田川へくると自分はきつとこれに乘る。芥川龍之介とも乘つた事が