木曽 山の手 東京 上野

最後の別れをつげるため、昔あなたと夏休に旅した木曽の一寒村を目あてに出発したのです。

役人達は私を追って居たに違いありません。木曽の×村の宿屋は私の長い眠りに驚いて駐在所にでも訴えたの

ところが昨年の夏も終り近く、私はふと山の手の或る町で彼女と出会したのでした。私は其の時はじめて、彼女が

。あの当時、上野に毎土曜日に開かれた音楽会が、東京に於ける殆ど唯一の権威ある音楽会でした。尤も、この他に或る有名

踏めましょうか。私は断然之を断って、此の広い大東京の中をただあてどもなく暮しまわったのでした。

プロを作る役目をひき受けました。かくして私は、東京の隅から隅へとうろつき歩いたのです。

たまま汽車に乗せられました。今から思えば私は東京に送り返されたのでした。

ででした。あなたはおぼえて居られるでしょう。あの当時、上野に毎土曜日に開かれた音楽会が、東京に於ける殆ど唯一の権威ある

生徒だったのです。私が彼女をはじめて見たのは上野の音楽学校の講堂ででした。あなたはおぼえて居られるでしょう。あの当時

其の秋から、かつてはあなたと私との愛を語りあった上野の杜は、今度は私とすえ子の愛を語るところとなったの