和歌山 銀座 駒込

そして或る晩、母はふいに、しばらくの間、和歌山にある生家へ行ってきたいと言いだした。久しく行かないから、先祖

ところが、その後、私は銀座に出たついでに、原稿料で、母へ羊羹を一折買い、吉川の

或る日の午後、駒込の伯父さまがいらして、母と何か話しこんでいかれた。同じ吉川

駒込の伯父さまは、戦災の焼け跡に、五室ばかりの瀟洒な家を新築

てみよう、そう母は答えたそうであるが、実は駒込の家に行くのが嫌なのである。そして私が代りに行って

「僕もそうかと思って、聞いてみたら、駒込の内には二度ばかり泊ったことがあるじゃないかと、逆襲さ

「駒込の家に行って来ましたよ。」

私は母にもし会社を早めに切り上げられたら、吉川は駒込へ廻るかも知れないと、前以て伝えておいた。何でもなく

、一週間ばかりの間は何のことも起らなかった。駒込の伯父さまからは何の便りもなかったようだ。私はつとめて、

かたがた訪れるのだと言う。引き留める理由はなにもなかった。駒込の伯父さんへの口実も立つと、吉川は陰で私に、ばかな