矢来町 ローマ 富士山 富士見町 両国 盛岡 京都 新潟 東京 吉祥寺 上野 千駄ヶ谷 お茶の水

急にまた親しくなったようであった。静子の家は矢来町にあったが、富士見町の英子の許までよく歩いてやって来るらしかった。

た口元には才智の閃きが見られた。いつもハイカラなローマに結って、鼇甲の簪を一つ※していた。それが彼女の

は造花の籠があって、狩野派の筆になる小さい富士山の軸物がその砂地の壁に掛っていた。昔その片隅に一面の琴

であった。静子の家は矢来町にあったが、富士見町の英子の許までよく歩いてやって来るらしかった。私が英子を訪ねると

私はその日五時の汽車で両国から佐原に向った。

英子の母と私の母とは故郷の盛岡で親友であった。で私が東京に出て来てから、私は

て、急な仕事のために帰れぬと云い送った。盛岡まで一寸帰れないことはなかったのである。然し私は英子の居る土地

きりだった。英子の兄の信夫はさる放蕩の失敗から京都に左遷せられて、其地の叔父の監視の下に大学に通って

人手に渡ってしまったので、その頃通っていた新潟の女学校を三年で止してしまって、彼女は弟を国に残し

母とは故郷の盛岡で親友であった。で私が東京に出て来てから、私は時々彼女の家を訪問した。英子

て、彼女は弟を国に残したまま叔母を頼って東京に出て来た、と云うようなことを私に話した。然し叔母

美事に裏切られた。私はそれらの気持ちをそのまま東京に持って帰った。そしてまた私は激しい maladid を受けたことに

何とはなしに再び吉祥寺に帰って来た時、私は頭も身体もぐったり疲れていた。

「上野の展覧会に行ったの。」と英子は答えた。「そう、それは

あった。――漸く「おきな」を出て今は千駄ヶ谷の叔母のうちにいる、先日一寸お寄りしたがお留守であっ

はお茶の水で別れた。彼女は其処から甲武線の電車で千駄ヶ谷まで帰るのであった。「身体を大事におし。」と私は云っ

私達はお茶の水で別れた。彼女は其処から甲武線の電車で千駄ヶ谷まで帰るのであっ