女と帽子 ――「小悪魔の記録」―― / 豊島与志雄
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外に出ると、今村は急に、横浜の方まで散歩したいと云い出した。それを波江は冷淡に打捨てて、
今村は通りがかりの自動車をひろい、横浜まで走らせながら、両腕をくみ、眼をとじた。
横浜の海岸の公園まで行った。そして今村は、沖についてる気船を眺め
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からあなたは銀座裏で酒をのみ放め、その晩は富士見町の待合にしけこみ、翌日はまた酒、夜はまた銀座裏、そして遅く、吉原
富士見町に行っても、吉原に行っても、行った夜は、あなたは元気で
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陰気だし、酒は普通だが、料理はつまらない。博多の本場風だといってる鶏の水たきが、東京にざらにあるどの水たき屋
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さんにも可なりの迷惑をかける。そんなこんなで、波江さんは福岡から東京に出奔してきた。東京に叔母さんがいた。二人し
はっきり云いますよ。波江さんは福岡の料理屋の娘だ。だからそのお父さんは料理屋の主人だ。その料理屋の
綾ってものがあるんですね。先年、あなたが郷里の福岡に帰った時、波江さんと、母を通じて知りあいになり、当時、
見たいからって……そう云うと、それが、昔、福岡の海岸の燈籠流しの晩にキスしたことを、なつかしく思い出してることに
れました。そして私はそこの主人から、このひとも福岡の出身だといって例の人に紹介されました。それからとにかく
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きた。東京に叔母さんがいた。二人して、日本橋の裏通りに小料理屋をはじめた。初めはどうにかいっていたが、
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で、波江さんは福岡から東京に出奔してきた。東京に叔母さんがいた。二人して、日本橋の裏通りに小料理屋をはじめた
も可なりの迷惑をかける。そんなこんなで、波江さんは福岡から東京に出奔してきた。東京に叔母さんがいた。二人して、
波江さんは結婚してしまった。ところが、波江さんが東京に出て来て、小料理屋をはじめてから、波江さんはあなたに手紙を
だが、あなた達はさっぱり別れてしまった――あなたは東京に戻ってくるし、波江さんは結婚してしまった。ところが、波江
ない。博多の本場風だといってる鶏の水たきが、東京にざらにあるどの水たき屋よりもまずいから、呆れたものですよ。もっとも
くらいあるのが、普通のことですからね。波江さんが東京に出て来てから、一人の男の肌にも触れなかったと、
があったというだけです。私が結婚生活に破れて東京に出て来て、叔母と一緒に小料理屋などを始めた時、今村さん
にはいり、老酒をのみ、よく食べた。それから電車で東京に帰っていった。
、あんなことになったんだが、僕の心は、東京のその女にだか、波江にだか、どちらにキスしたのか
の燈籠流しの晩のことだって、僕はあの当時、東京で、ひそかに想いをよせてる女があった。その女が、丁度波江
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は富士見町の待合にしけこみ、翌日はまた酒、夜はまた銀座裏、そして遅く、吉原までのしましたね。自暴自棄でしてるのか
で、私は初めて微笑したものです。それからあなたは銀座裏で酒をのみ放め、その晩は富士見町の待合にしけこみ、翌日は
も無理はありません。面白いことをきかしてあげましょう。銀座裏で、橋のたもとに出た時、あなたはしきりに橋の欄干に