鎌倉 横浜 品川 東京 新橋

すると、つい先々月のことです。私は鎌倉から汽車で東京へ帰る途中、彼女の姿を見かけたのです。

はっきりしたところが分りませんでした。移転の際、横浜の何処とかへと貼紙がしてありましたが、それを私は覚え

、分らないとの答えです。原稿の小包の消印も、横浜とだけしか分りません。

を物色し初めた。それが品川までくり返されたが、品川から先は、ステッキの頭に釘付にされたようになった。

て、歩廊に立ってる人々を物色し初めた。それが品川までくり返されたが、品川から先は、ステッキの頭に釘付にさ

も見当りません。私は馬鹿だったのです。大森か品川あたりで乗換えればよかったのです。それを下らない空想に耽ったばかりに

友人達が山や海へ避暑に出かけた中を、一人東京に残って、或る長篇を書いていました。朝遅くまで寝てい

と、つい先々月のことです。私は鎌倉から汽車で東京へ帰る途中、彼女の姿を見かけたのです。

それ以来私は、東京桜木町間の電車には、どんなに懐の淋しい折でも、必ず二等

その空想からさめた時、汽車はもう新橋まで来てしまっていました。私は汽車から降りました。東京駅まで