銚子 北海道 札幌 東京 内幸町 吉祥寺 新宿

の面倒をみてやらなければならなかったし、私は銚子に残ってる酒を飲みながら、すっかり酔っ払った風をすることが出来た。

ない。今年の六月、一寸した用件のついでに、北海道を暫く旅して廻って、登別の温泉に泊った時、髪の結い方

復してしまう。後で私は知ったのであるが、北海道の女には、殊に不品行な女には、そういう眼付を持ってる者が

彼女の眼付を、物珍らしそうに待受けてるうちに、ふと、北海道の温泉宿のことをまざまざと思い浮べ、次には、窓の外の澄みきっ

「東京にも、北海道ほどじゃないが、静かな落着いた公園があるから、案内してあげましょうか

知れない。後で妻とひどく喧嘩をして、私は北海道の時から光子と関係がついてるのに、それをのめのめと家に引張り込み

いけない。いくら僕が呑気で図々しくても、もし光子と北海道で変なことがあったのなら、何で家の中にお前の側に

が響いていた。それからまた私の頭には、北海道の広漠たる平野やアカシアの都会や山の湯のことなどが浮んできた

「例えば、河野さんと実は関係がついていたり、北海道でいろんなことがあったり、そんな風な奔放な女だったとしたら？」

まま河野さんの所へ置いとくのはいけませんわ。北海道から遙々頼ってきたのをあすこへやったのですから、あんな話を聞い

た。もっと立派な人だと思いっていました。北海道で関係をつけた女を、二人でしめし合せて家に引張り込んで、私

、つまらない邪推はしないでくれ。」そして私は、北海道では何事もなかったことを諄々と説き、次に一昨日光子が会社へ

が出来た。彼女自身の云う所に依れば、彼女は札幌の文房具屋の娘で、遠い縁続きになるその温泉宿へ、保養旁々来て

てしまっていますわ。先生にだけお話しますけれど、私札幌で一人恋し合った人がありましたの。でも今ではもう、

農科大学生との失恋や嫂との喧嘩などが重って、札幌の家に居られなくなった訳だの、何処かの家で働きながら昼間

て、それから先生の所へ伺いましたの。でも札幌の話はみんな本当ですわ。私よく喧嘩をする女だと、自分でも

日初めて聞かされたのであるが、彼女はあの時既に札幌の家に居にくくて登別に来てたのだそうだし、私はまた

てしまった。そして八月の半ば、若い女が不意に東京の私の自宅へ飛び込んできて、月岡光子と女中へ名前を通した

は女中も来るから、そしたら暫くの間、見物がてら東京へ出るつもりだなどと云って、先生と私のことを呼びながら、私

「東京にも、北海道ほどじゃないが、静かな落着いた公園があるから、案内

彼女が私の家へやって来た時には、いきなり東京へ飛び出して来たものの、身寄りの者も知人もないし、上野駅前

都合がよかった。ステッキを打振ったり引きずったりしながら、内幸町から宮城前の堀端の方へ歩いていった。街路の地面は心地よく乾い

で、中野までの切符を買ったが、乗り込んだ電車が吉祥寺まで行くものだったから、一層のこと井ノ頭へ行ってみようと思った。

吉祥寺で電車から降りて、井ノ頭公園の方へ歩き出した時、私は光子

構いませんわ。」と彼女は答えた。「私今晩は新宿の叔母の家に泊っていきます。」

置いて貰い、昼間は画塾に通っているのである。新宿に叔母がいるなどということを、彼女は今迄匂わせもしなかった

ような気がしたんですもの。本当は少し前から新宿の叔母の家に来ていたんですの。所がその叔母が大変