牛込 名古屋 大阪 弁天島 銚子 水戸 東京 水道橋 飯田橋

行き、洋菓子屋の前で暫く待たされた。それから、牛込まで帰るのだという彼女と、なおお茶ノ水のあたりまで歩くことにして、

「名古屋で。名古屋が私の故郷よ。」

「名古屋で。名古屋が私の故郷よ。」

。なぜって、女もさすがに居堪らないとみえて、大阪の方へ行ってしまったそうだから。そして、それきり行方不明さ。また誰

ていて、隆ちゃんを生み落すと吉川さんを捨てて、大阪の方に……。」

光りは見えなかった。一面に茫とした中に、弁天島や対岸の点々とした灯が、魚の眼のように浮出していた

ああ」と村田は答えて、俄に思い出したように、銚子の底に残っている冷たい酒を貪り飲んだ。

新らしい銚子を持って来る時、お清は扉を開くと同時に、一寸微笑んで睥むよう

約束が、ぽかりと投げ出されていた。周平は手を銚子にやったが、酒はもうなくなっていた。も一本とお清が云う

た。そしてまた同じくらいに、自分の杯へも手の銚子を持っていった。

―常陸の海岸へ避暑することになった。其処に、水戸に居る親戚の別荘があるのだった。

友人等は大抵東京を離れていたし、東京に残ってる者等には、横田の家で暑中を過すことを知らして

友人等は大抵東京を離れていたし、東京に残ってる者等には、横田の家

医者が近くになかった。病気に神経質な保子は、兎に角東京へ帰ったがいいと云い出した。それで、横田だけ後に残って

「あちらでは、どんなに動き廻っても平気だったけれど、東京に帰ってくると、身体がだるくて仕様がないわ。やはり海岸はいい

のことはよく知ってるつもりよ。……私もね、東京へ逃げてきた当座、それはつらい生活をしたのよ。一日

「いいえ」と周平は答えた。「金がないから東京を動けやしないんです。」

二人は水道橋へ出た。掘割の水が黒く淀んで、冷かな火影がちらちら映っ

飯田橋で、支那饂飩屋の淋しいカンテラの光りが見えた。二人は平気でその