槍ヶ岳 日本アルプス 大天井岳 白馬岳

息をついて見渡せば、正に天下の壮観である。目指す槍ヶ岳の尖峰は、屹然と中空に聳え、鋸歯状に輪廓を刻んで、左手穂高

土地の人々は、それらの雄大な山岳を呼ぶ時、槍ヶ岳、穂高岳、燕岳、野口五郎岳……などとは云わない。岳の一

眼前にアルプス連山を眺むるや否や、「あれが槍ヶ岳……白馬山はどれ……。」などと云うことを止めて、おのずから、

それらの連峰の一つ一つを呼ぶに、例えば、槍ヶ岳、穂高岳、などと云うことと、槍、穂高、などと云うこととの

「槍ヶ岳が……穂高岳が……大天井岳か……。」

槍ヶ岳に対して「槍は……」と云うことは、神に対して「なん

」となり、真の登山者の心を以てすれば、槍ヶ岳に対して「槍は……」となる。神の霊気が……山岳の

中房温泉は、既に海抜四千八百尺余の高地にあって、日本アルプスの支脈に懐かれている。早朝に温泉を発して、山の尾根伝いに

「槍ヶ岳が……穂高岳が……大天井岳か……。」

などの諸岳となり、大気澄む日には、遙かに白馬岳をも遠望される。そして高瀬川の峡谷を距てて、深い山襞に雪を