土竜 / 佐左木俊郎
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「竜雄です。天王寺の竜雄です。」と、青年は名乗った。
、一生、誰も去れどは言わねえがんな。――天王寺の春吉らなど皆土地売って行って、今じゃ、帰って来たがっていっ
「天王寺の竜雄さんなんざ、百姓に限るって、あの人達こそ百姓などしねえでも
「ヨーギ。天王寺さ行って、糯米買って来うちゃ。兄つあんさ、百合ぶかしでもし
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燻らさないうちに唐鍬の柄でそうっと揉み消した。そして、佩嚢から、なでしこの刻み煙草を取り出し、二三度吸った。
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「あの放浪者は、今、北海道の、十勝の……先達手紙寄越して、表書きはあんのでがすが。―
「ほだら父、父も北海道さ行がねえが? 北海道さ行って、鉄道の踏切番でもすれば…
「ほだら父、父も北海道さ行がねえが? 北海道さ行って、鉄道の踏切番でもすれば……! 踏切番はいい
「ほだから父、北海道さ、俺と一緒に行げばいいんだ。」
「ほだって俺、北海道の土になってしまうの厭だな。いつ帰りたくなるが判んねえし、
た。せっかく市平が帰って来たのに、そして再びの北海道行きが約束されているのに、ゆっくりと話をする暇も無かった。
が出来っこったら、父どこ置いで俺だって、何も北海道きって行きたく無えげっとも……」
―父も、こうして難儀してより、思い切って、北海道さ行げばいいのに!」
しても生まれた土地から離れる気にはなれなかった。北海道に行けば、安楽な生活が待っているのだと伜は言った。頼
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か? 天王寺の竜雄さんなんざあ、中学校を出て、東京で三年も勉強してせえ、他所さ行ったんじゃ、とっても駄目だ
「東京になざあ、こうえな青々したところ、どこにも有すめえもねえ
竜雄は、三年前に東京へ出て行った。高等予備校に通って、高等学校の受験準備をするの
「どうも僕なんかには、東京は適当ねえようだね。うるさくって、うるさくって。あれじゃ、気が荒く
「東京さは、今度は、いつ御上京でがす?」
「東京なんか、もう、行く気になれんですね。」
いや、百姓が一番だ。僕は、百姓したいから、東京へなんか行くのを止めたんでね。でなけりゃ、まだ……」