一坪館 / 海野十三
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「わたしゃね、これから弟のいる樺太へ帰ろうと思う。すまないけれど源ちゃん、この車で、上野駅まで送ってお
「でも、わたし身内といったら、樺太に店を持っている弟の外ないんだものね」と、矢口家の
「おかみさん。どうしてかえって来たのですか。樺太へいっていたんでしょう」
源どん。あたしが途中で病気になったもんだから、樺太へは渡れなくて、仙台の妹の家に今までやっかいになっていたの
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にしたいです。そのときには、銀座はもちろん木挽町から明石町の方まで、すっかり飛行場の下になってしまうはずです。どうですか、おもしろい
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赤坂から青山の通りをぬけ――そこらはみんなむざんな焼跡だった――それから渋谷
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赤坂から青山の通りをぬけ――そこらはみんなむざんな焼跡だった――それ
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江戸から明治にかけてこのような消防のすがたが、はやったことを、源一は
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病気になったもんだから、樺太へは渡れなくて、仙台の妹の家に今までやっかいになっていたのさ」
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銀座の焼跡
であるが、ここは銀座である。ただし、あのにぎやかな銀座の姿はどこにもみられない。みわたすかぎり焼野原である。
さて、その始まりの話であるが、ここは銀座である。ただし、あのにぎやかな銀座の姿はどこにもみられない。
あまりにもかわりはてた無残な銀座。じつは、昨夜この銀座は焼夷弾の雨をうけて、たちまち紅蓮の焔でひとなめになめられて
棒くいの銀座である。あまりにもかわりはてた無残な銀座。じつは、昨夜この銀座は焼夷弾の雨をうけて、たちまち紅蓮の焔
灰と瓦と、まだぷすぷすとくすぶっている焼け棒くいの銀座である。あまりにもかわりはてた無残な銀座。じつは、昨夜この銀座
車は、交番跡から銀座横丁へすべりこんだ。そしてすぐ停った。そこはすぐ裏通りの四つ辻だっ
銀座の焼けあとの一坪の土地を、とうとう自分のものにすることができた
銀座復興の店開きの第一番を、少年がひきうけるのはゆかいではないか
通りだから、そのうちにきっと誰か通るにちがいない。銀座はどんなになったと、心配してみにくる人が、きっとあること
いくら焼けあとでも、ここは銀座通りだから、そのうちにきっと誰か通るにちがいない。銀座はどんなに
の七時であったが、人影はさらに見えない。みんな銀座を忘れてしまったのかなあ。
て顔をあげた。すると源一をよんだ相手は、銀座の本通りに立って、こっちを見ているのだった。さしこのはっぴに
「待てよ。こんなれんげ草を持っていって銀座の店に並べても、ほんとうに売れるかなあ。チューリップや、ヒヤシンスなら、
ゆかいになって、花をつんだ車にのって、再び銀座にむかった。
源一は、銀座の焼跡にもどると、さっそくれんげ草を売りはじめた。
源一は銀座の焼跡に人が通りかかると、こういって声をかけながら、れんげ草の
それとも場所がよくないのかな。この店は、銀座の通りから、ちょっとひっこんでいるから、ここまで入りこむのがおっくうなんだろう
へ大きな声でさけんだ。犬山猫助は、今朝からこの銀座通りへ、似顔スケッチの店をひらいたのである。彼は、源一に
銀座も、バラック建ながらだいぶん復興した。
銀座の通りの、しき石の上には、露店がずらりとならんで、京橋
であろうか。人々は、それをさがすために、みんな、銀座の通りへあつまってくるのだった。ものすごい人通りが、こうしてできる。
銀座の通りからでも、源一の店は見えない。通りにもだいたいバラック式
刑務所の中に暮している。だから三人組は、この銀座へ顔を見せないのであった。
熱が出、はげしいせきが出るようになった。そこで銀座で仕事をすることは、もう三ケ月も前にやめたのである。
もともとからだの丈夫な方ではなかったので、人通りしげき銀座通りに立ち、もうもうとうずまく砂ほこりを肺の中に吸って、暮した
そのおかげで健康がもどって来たのだった。そしてときどき銀座へあらわれて、源一の一坪店を見によってくれる。
で復興しはじめた。まずその第一着手として、銀座八丁の表通を、一か所もあき地のないように店をたてならべることに
そのうち銀座は、えらいいきおいで復興しはじめた。まずその第一着手として、
表通りの建築がすすむにつれ、こんどは銀座の裏通りの建築がはじまった。表通りがにぎやかになるのなら、裏通りへも
もこちらにも開店祝いのびらをにぎやかにはりだした。「銀座が復興したね。ずいぶんにぎやかになったね」
一日ごとに目に見えて銀座の表通りは家がたちそろいにぎやかになっていった。それと競争のよう
人はもちろん、いい年をした老人などもわっしょいわっしょいと銀座へおしだした。
品物が高いそうなといわれても、それじゃあ銀座へ行くのはよそうやという者はなく、どんな品物がならんでいて
だから、それを聞き伝えた人々は、われもわれもと銀座へ出てくるのだった。
見てほしくなって買ってしまうのだった。そうして銀座では、ものすごく物が売れるようになった。源一のテント店はどうなっ
ばかりのようであったが、そういう人たちも、たびたび銀座をあるいているうちに、高値になれてしまい、そしていつも不自由を感じて
銀座の表通りの復興店舗もすっかり出来上り、りっぱになったので、昔のよう
源一は少佐と別れるときに、銀座の小さい店のことを話した。すると、いずれお礼かたがたゲンドンの店を
。その塔は近所の家をすっかり見下ろしている。いや、銀座界隈を見下ろしているといった方がいいだろう。
銀座を通る人々は、誰もみんな、この新しい塔の建物に目をむけた
この新しい銀座名物の建物は「一坪館」と名づけられた。
銀座のお客さんは、こうした風がわりを好む。きゅうくつな階段を、がけのぼり
一坪館の建設にあおられて、銀座かいわいの商人たちも、これまでの平家建や二階建では、気
もちろん、銀座をあるく人のみなりも、ずっとよくなってきた。むかしのようなゲートル
は安心して文化のみちをふんですすむのだ。そして銀座かいわいは、どこよりもまっ先にきれいになり、りっぱになり、そしてあっと目
靴はやはりぴかぴか光っていた。文化の光は、ようやく銀座からかがやきはじめたのである。「ふーン、もう目につかなくなっちゃっ
ほこりがつかなくなった。一丁目で靴をみがいて、銀座八丁をぐるぐると二回ぐらいまわっても、靴はやはりぴかぴか光っていた
銀座をあるいていても、もう靴にほこりがつかなくなった。一丁目
大丈夫です。二十階の一坪館ができてごらんなさい。銀座の新名物になりますよ。どうです、おかみさん。これをいっしょにやり
は、その思いつきが自分でもたいへん気に入った。なにしろ銀座に今二十階建の家なんかありはしないのだ。そういう高層建築物
新しい一坪館は、十二階の摩天閣となって、銀座を行く人々にお目みえした。
旅客機が発着できるようにしたいです。そのときには、銀座はもちろん木挽町から明石町の方まで、すっかり飛行場の下になってしまうはずです
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にきめた源一だった。しかし花などというものがこの東京に――いや、この日本にあるのだろうかと源一は首をかしげた
東京はこのとおり焼けてしまって、どこをみまわしても一輪の花さえみあたら
源一は、唇をかみしめた。自分もなさけない。東京もなさけない。日本もなさけない。未来にたのしみも希望もみつからない。
た老婦人こそ、この一坪の店を源一にゆずって東京を去った矢口家のおかみさんだった。焼けるまでは、おかみさんは、
かを知りたいこと、それからもう一つには、やっぱり東京へ出て、新しい時代にふさわしい商売をはじめたいと思ってね、それで
いないよ。それよりもね、源どん。あたしがこんど東京へ出て来たのは、一つはこの店のあとが今どうなっ
「源どん、かえって来たよ。けさ東京についた。源どん、元気かわりないか」
十二階の一坪館は、たちまち、東京の大人気ものとなった。したがって各階の店は売れること売れること、みんな
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みんなむざんな焼跡だった――それから渋谷へ出た。渋谷も焼けつくしていたがおまわりさんが辻に立っていた。そこ
――そこらはみんなむざんな焼跡だった――それから渋谷へ出た。渋谷も焼けつくしていたがおまわりさんが辻に立っ
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石の上には、露店がずらりとならんで、京橋と新橋との間の九丁の長い区間をうずめている。
前には、新橋の上に立つと、源一の店がどこにあるか分った。しかし今
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「ほう、すごいすごい。むかし浅草に十二階の塔があったがね、これは最新式の十二階だ
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、しき石の上には、露店がずらりとならんで、京橋と新橋との間の九丁の長い区間をうずめている。