地球発狂事件 / 海野十三 丘丘十郎

地球発狂事件のword cloud

地名一覧

モスクワ

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「ケノフスキーからだ。モスクワから出した手紙なんだ。これは僕が、約束しておいた手紙な

ロンドン

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したとき、突然ものすごい地震が起こり、軟泥は舞上ってロンドンの霧のようにあたりに立罩め、各自の携帯燈は、視界を殆ど数糎

世界連合の臨時緊急会議がロンドンで開催せられた。これはいわずとしれた、大西洋海底の怪人集団に

ね、ニューヨーク中央電信局扱いになっている。発信局はロンドンなんだ。海底電信で来たんだね。近頃めずらしい古風なやり方だ」

。……とにかくさ、要するにロンドン港がくさい。これからロンドンへ網をかぶせるべきだ。誰か四五名、ロンドンへ行って貰おう。特別に

これからロンドンへ網をかぶせるべきだ。誰か四五名、ロンドンへ行って貰おう。特別に社機を出して貰うよう、局長には話を

こんなことから、ロンドンに俄にスポット・ライトが向けられた。

アルプス

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ね、外ならぬお仲間たちだから喋るが、実はアルプスの山の中へ立籠るんだ。氷に穴をあけてね。そこにいれ

「なんだ、ばかばかしい。それにアルプスの中はいいが、末には食糧に困るぞ」

「いや、アルプスへ籠るよりは冒険的で近代的で――やあ、部長。どこへ行ってい

大西洋

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て以来ずっと一緒に手をとって来た親友水戸記者を大西洋に置去り、自分ひとりアイスランドへ帰っていくドレゴの気持ちは、さすがに晴れなかった

ユタ州

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アメリカのユタ州の技術大学のアンダーソン教授が、始めて一つの対策研究を発表したとき

グリーンランド

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何を始めたかというと、まずグリーンランドの海岸から、水中を伝わる超音波をもって、毎日のように怪人集団の城塞

水上に浮かんでいるアンテナを通じて放送させ、それをグリーンランドの海岸無電局が受信することになっていた。そして更にそれは局より

水戸

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の命名者は、ドレゴ記者と仲よしの隣人である同業の水戸宗一君であった。

したら、それはこれらの命名者であるドレゴ記者と水戸記者の、たちのよくない悪戯かもしれないと、始めはそう思った

それは先にも名前をちょっと出したが、日本人記者で水戸宗一という三十歳ばかりの背の低い色の黒い男であった。

のいうことを聴かず、片端からあべこべの実例をもって水戸の甘い説を薙ぎ倒していった。

と事実をあげて反駁した。がドレゴはいつになく水戸のいうことを聴かず、片端からあべこべの実例をもって水戸の甘い説

しまうであろう」と心細いことを主張して譲らなかった。水戸はドレゴの説をくつがえすために、色々と事実をあげて反駁した。

も悪魔が支配しているか」という問題だった。水戸は「もちろん神々によって支配されたる有難い世だ」と言ったの

例の事件を発見する日の前夜、ハリ・ドレゴは水戸を引張りまわして町中を飲み歩いた。この日二人の間には珍らしく議論が

幕に包まれ、人々に快い休息を与えていた。水戸は邸の中から爺やの出てくる間、その闇の中に友を

そのときはもうドレゴは前後不覚で、彼の体重は完全に水戸の身体に移っていた。時刻は午前二時に近かったろう。夏も

この論議は、ドレゴの家の玄関口まで続いた。水戸はこの友情に篤いドレゴがその夜飲み過ぎたことと、日頃に似合わず

「ああ、これは水戸様……おや、若旦那さまを。これは恐れ入り奉りました」

ガロ爺やは、恐縮して水戸の腕から重いドレゴの身体を受取った。そのときドレゴは突然頭を獅子舞

ていたが、それもやがて聞こえなくなった。爺やは水戸に丁寧に礼を述べて玄関口を閉め、それからアルコール漬の若旦那さま

が覚束ない。ドレゴは、最も信用している有能な通信員の水戸を誘うことを忘れなかった。

さすがの水戸も、いきなり門口から飛び込んで来たドレゴから、あと十分間に登山の用意

分るだろう。さあ、すぐ仕度に取り懸るんだ、早くしろ水戸」

「水戸、そうしてぼんやりしている一分間というものが、全世界にとっ

水戸は何事とも知らないが、やっと事態の重大性を呑み込めたと見え、それ

猶予時間を十分間まで使わないで水戸はドレゴの操縦する車の中へ乗りこんで、彼と肩を並べた。

水戸はドレゴの脇腹を小突いた。

水戸は、きっとなって、顔を風よけの硝子の方へ近づけると、首を

「おう、あれか」と水戸の声は慄えた。

そういった水戸の言葉を、今度は逆にドレゴが愕く番となった。

だとはいい切れなかった。なぜならば彼はもう一つ水戸に語るべき事柄を忘れたのであった。尤もそのときドレゴ自身が、

ドレゴと水戸が、やっぱり一番乗りだった。ヘルナー山に登るには相当の用意が必要だっ

水戸に語って聞かせたのであった。そしてドレゴと水戸の両人は、船体から約二十米以内に近づくことを許されなかった。

の道程に、ドレゴは彼の事件発見の顛末の一切を水戸に語って聞かせたのであった。そしてドレゴと水戸の両人は、

にも用意周到だ。やっぱり、よかった。協力者として水戸を誘ってよかったのだ。もしドレゴ自身ひとりで出懸けて来ようものなら、

に通信が出来るように思っていた。そこへ行くと水戸は咄嗟の場合にも用意周到だ。やっぱり、よかった。協力者として

水戸はそういって、リュックの中から携帯用の超短波送受信機を取出して組立始め

水戸は通信機の組立の手を休めないで、そういった。

ドレゴは、水戸の待っている場所まで戻る間に、この事件のためにすばらしい名称を思

断崖の上で超短波の通信装置の組立に従っていた水戸宗一は、ドレゴの方に思いやりのある眸を送って、彼を元気づけ

水戸にそういわれると、ドレゴはおおと呻いて顔色を変えた。

第一報を送らないと、誰かにだしぬかれてしまう。水戸、今からではもう遅すぎるかなあ」

ドレゴは、水戸の腕をゆすぶった。そのとき水戸は、通信装置の試験をようやく終ったところだった。

ドレゴは、水戸の腕をゆすぶった。そのとき水戸は、通信装置の試験をようやく終った

水戸は傍から友誼に篤い忠言を送った。ドレゴは、無言で肯いた。

ドレゴは紙片を水戸の方へ差出した。彼の声は明るく、そして大興奮に震えてい

を超越しているのだ。だが本記者は、同業水戸記者の協力を得て、これより最大の努力を払って本事件の実相

な大掛りな調査競争となったために、ハリ・ドレゴや水戸宗一の役割は、すこぶる貧弱なものに墜ちてしまった。彼ら両人に

「これから、どうするかね、水戸」

野心勃々たるハリ・ドレゴは、まだ諦めかねて水戸に相談をかけた。

さっきから水戸は、巖陰からオルタの町の方を見下ろしていたが、振り向いて

「水戸。君はホーテンスと話をしたんだな」

聞いていたドレゴは、一段と顔の色を輝かすと水戸の手を取って引っ立てた。

と水戸は応えた。それを聞いていたドレゴは、一段と顔の色を

「おい水戸、これからホーテンスに会おうじゃないか。君は僕を紹介するのだ」

だが、水戸は首を左右にふった。

水戸は下界を指した。それは彼らの古巣であるオルタの町だった

まもなく焦るドレゴを連れて、水戸はホーテンスの跡を追った。そしてかれは、ホーテンスとドレゴとを、自分

の日本人がいて、手伝いの役を勤めていた。水戸がこの家へ下宿するようになったのも、この三平が薦めたもの

この家における目下の下宿人は、水戸の外に、音楽家の高田圭介と音羽子の夫妻があり、それからソ連の

水戸の計画した晩餐会は大成功であった。ドレゴが喜んだことは勿論の

水戸は、ドレゴがホーテンスが調査したことの詳細を知りたがっていると述べる

「水戸君には話しておいたことだが、あの怪汽船ゼムリヤ号はソ連船

んだね。よろしい、ではそれから先の資料だ。水戸君も愕くことがある筈だ、なぜといってこのゼムリヤ号は、調べれ

水戸が酒壜を持ってホーテンスの盃に琥珀色の液体を注ぎそえた。

訊いたのは水戸だった。

水戸が誰にいうともなく呟いた。

水戸が、疑問をなげかけた。

は更にゼムリヤ号に関する未発表の調査事項までを、ドレゴと水戸の前にぶちまけたのである。

して、煙草の煙をやけにふかすのであった。水戸はちょっと心配になった。ドレゴのそういう態度が、折角今夜この招待に

。事件の当夜、あの事件の発見に先立つこと数時間前、水戸も知っているとおり僕はあの夜泥酔していて漸く自分の寝台に

、ホーテンスは盛んに手をふりながら叫んだことである。水戸は椅子の中に深く身体を沈めて、じっと考えこんでいる。

そういって、この烱眼なる記者は、ドレゴと水戸の手をかわるがわる握ってこの困難なる仕事への再発足を激励し合った

、ドレゴの選んだこの事件の題名も、そばに居合わせた水戸宗一の意見によって改訂され“地球発狂事件”として報道さ

ドレゴの感覚から摘出した“ゼムリヤ号発狂事件”や、水戸の唱えている“地球発狂事件”は共にこの範疇に入るものといっ

にこの報道が行渡り話題としてにぎわった。ドレゴと水戸の両人もまた午後三時のお茶をのみながら、この事について

ドレゴがいった。水戸は黙って肯いた。

ドレゴが、水戸の硬い面を凝視した。

そういって水戸記者は、静かにドレゴの面を見詰めた。ドレゴはくすりと笑って、

それを聞いて水戸ははっと顔を硬くした。が、すぐさま元の何気ない表情に戻って

水戸は軽く笑って、冷たいコーヒーを飲み干した。

「待ち給え!」と水戸は小さく叫んだ。

「はははは、大きなことを云うぞ、君は。おい水戸、誰がそんなことを実行に移すだろうか。大西洋は広く且つ深いのだ

「おう、ドレゴ君に水戸君」

と水戸は、せきこんで訊いた。

水戸は何時になく昂奮して叫んだ。

ジム・ホーテンス記者は、ドレゴと水戸とを伴って乗船した。そして前甲板の喫煙所で団長ワーナー博士に

水戸も丁寧な礼を博士に捧げた。

号事件については原子爆弾説が圧倒的だった中に、水戸君はワーナー先生と同様に、大西洋にゼムリヤ号事件の鍵があると

博士の問いに、水戸は何かを応えなければならなかった。

、水戸の説に傾聴を惜しまなかった。が、当の水戸は、そこで極りが悪そうに、微笑して、

博士は、水戸の説に傾聴を惜しまなかった。が、当の水戸は、そこで極り

と水戸が新聞記者らしい率直さでぶちまければ、博士は真面目な顔で頷く。

と水戸が訊く側へ変った。

水戸は昂奮して、思わず途中で口を挟んだ。

水戸は呟いた。

「何が合わないって、水戸君」

ドレゴと水戸は、船の手摺にもたれて、矢のように北へ逃げて行く海波

水戸は、そのことに信念を持っているようだった。

水戸はドレゴの顔を改めて見直した、この友は、このことをなぜ二日間

と水戸は手斧に放射能物質が付着しているかどうかを調べようとはしなかっ

ドレゴは、ポケットから皺くちゃになった封筒を引張りだして、水戸に見せた。

水戸は、それを拡げて見ていたが、やがてにやりと笑って、それ

水戸は、そう言ってドレゴに警告した。

水戸は数えた。

ホーテンスがそういった。ドレゴと水戸とは共に頭を左右に振った。

と、水戸がたずねた。

ドレゴ記者も水戸記者も、ホーテンスと同じようにこの部屋に詰めていた。三人の

靴の先で、軽くリノリウムの床を叩いていた。水戸記者は塑像のように硬化している。

大きな鈍い音が起った。素破――と、水戸記者が横を見ると、ドレゴ記者が床にぶっ倒れていた。

ドレゴは知覚がなかった。水戸は烈しい不安に捉われた。彼はドレゴを仰向かせると、オーバーの胸を

「おお水戸。異常現象らしいものが何か起ったね。どうだ」

「同感だ。水戸に同感」

と水戸は、彼の胸を引いた。

ホーテンスは悪びれず謝罪してから、水戸の方へ手をあげて合図をした。

水戸は肯いて、極度に足音を立てないように注意して、ホーテンスの傍

博士が記者の方を見た。水戸が、ケースを博士に差し出した。そして博士の指に摘まれた紙巻煙草

水戸が早口に言葉を挿んだ。

「ふうん、君は勉強しているね」と博士は水戸の顔を見直していった。

、博士の指にある煙草が幾度となく消えたが、水戸はその度に、ライターを摺った。

と水戸は呟いた。

ドレゴが誘ったので、水戸記者もそれに応じて、この無電室を出た。

「護衛艦たちは、いやに遠くへ離れちまったねえ、水戸君」

。ドレゴは水戸にすがりついて震えていたし、水戸は水戸で火の消えた煙草をしきりに吸いつつ硝子戸越しに泡立つ海面へ空虚な

いた。ドレゴは水戸にすがりついて震えていたし、水戸は水戸で火の消えた煙草をしきりに吸いつつ硝子戸越しに泡立つ海面へ

戦慄の空気の中に息を停めていた。ドレゴは水戸にすがりついて震えていたし、水戸は水戸で火の消えた煙草を

ワーナー博士のところに近づいたのはホーテンスだった。続いて水戸がドレゴの腕を押しながら、それに加わった。

、笑いながらもっと前へ出て喋れと合図をした。水戸記者はホーテンスと反対の意見だが、何を考えているのであろうか

水戸記者の声だった。ホーテンスはふり返って水戸を認めると、笑いながらもっと前へ出て喋れと合図をした。水戸

水戸記者の声だった。ホーテンスはふり返って水戸を認めると、笑いながらもっと前

「水戸君の説は、どうなんだ」

と水戸は本当に残念そうな顔をした。

水戸はここでちょっと言葉を停めて、博士の顔を見た。博士は軽く

がある。これが僕の同一原因説なんだよ、水戸君。だからこそ僕は新しい原因説を出した」

ホーテンスは熱心に水戸を見詰める。

水戸の説は大胆極まるものであった。そうしてここに論ぜられたもの

聞けようとは期待していなかったからである。だが水戸はひとり、恥しそうに静かに微笑した。

「博士は水戸の説に賛成なさるんですか」

おらぬ」と博士は明らかに否定し「だが今の水戸の説により、わしは一つのヒントによって、わしは最近の

ホーテンスを始め皆は愕いた。水戸も愕いた一人だった。

を決行するつもりだ、何しろプログラムに全然なかったことを、水戸君から得たヒントで行くんだから、少々手数がかかる」

水戸が顔を赤くして叫んだ。

名の記者であった。ホーテンスは勿論のこと、ドレゴと水戸が加わることになっていた。

水戸もドレゴも、その渦巻の中に顔を見せていたが、給仕が

たのは、それから三十分ほど後のことだった。水戸は逸早く彼を認めた。そして彼が非常に興奮していることも、

水戸は彼が元の席についたとき、低い声で訊いた。

ドレゴはそう応えて、苦しそうに顔を歪めた。水戸はそれ以外彼を追求しなかった。今この友人を更に苦しめてはなら

た。会議は少し前に終わっていた。ホーテンスは、水戸とドレゴを呼んで博士の部屋を叩いた。

水戸が訊ねた。

その翌朝、ドレゴは水戸に附き添われて、ワーナー博士の許へ行った。ドレゴは都合により、

変更したかについて一言も訊きはしなかった。水戸は、博士の肚の太さに対し畏敬の念を生じた。

町の仲好しは一時北と南に別れることとなった。水戸はドレゴに花を持って迎えるという彼の崇拝者に対し十分注意を

する気になったのだ。彼は水戸を誘ったが水戸は応じなかった、こうしてオルタの町の仲好しは一時北と南に

なって、とうとう帰国する気になったのだ。彼は水戸を誘ったが水戸は応じなかった、こうしてオルタの町の仲好しは

抱いて泣いた。彼は帰りたくもあったが、しかし水戸を只ひとりで非常な危険へ追いやることの辛さ故に泣いたので

下船のとき、ドレゴは滂沱たる涙と共に水戸を抱いて泣いた。彼は帰りたくもあったが、しかし水戸を只

「水戸。危険な仕事は出来るだけ早く切り上げて、オルタの町へ帰って来てくれ

ドレゴは水戸の両頬にいくども熱い口づけを残して、遂に去った。そのとき彼

ホーテンスも水戸も、列の最後尾に並んで共に元気だった。

「おい水戸君。昨日D十五号だけがあのとおりひどくやられて他の艦船が大した

た。そうと感づいていたら彼はもっと多くのことを水戸に質問したであろう。

ホーテンスは水戸の説に興味を覚えた、しかし真逆そのことが間もなく本当に水中

と順に進んで第九番のホーテンス、第十番の水戸が海面下に姿を消したのはそれから二十分後のことだった

事件が起こって以来ずっと一緒に手をとって来た親友水戸記者を大西洋に置去り、自分ひとりアイスランドへ帰っていくドレゴの気持ちは、

について良心が咎めて仕方がなかった。そして、親友水戸の上に何か恐ろしい魔物の爪がのびかかっているように思えてなら

ひとりでわけのわからぬことを口走っていた。彼は水戸をどうしてあそこへ置去りにしたのか、それについて良心が

年増のアイスランド女だった。彼女はサンノム老人の姪で、水戸なんかの泊っている下宿屋で働いていて、主人のサンノム老人を助けて

「ドレゴ様、おひとりなんですか。水戸――水戸さんはどうしましたか……」

「ドレゴ様、おひとりなんですか。水戸――水戸さんはどうしましたか……」

ごらんになり電報をお読みになれば、あなた様が必ず水戸さんを連れて帰っていらっしゃらなければならないことは、お分りの筈じゃ

「そんなこと、ございませんわ。あなた様は水戸さんの唯一無二の御親友で……」

「――だってあなたさまは愛する水戸の唯一無二の親友でいらっしゃいますものね」

も忘れて、「へえっ」とおどろいてしまった。ケノフスキーが水戸と同じくサンノム老人の下宿にいることは勿論知っていた。彼はソ連

に向って報道した最高名誉を担っている方でしょう。水戸さんだってそうですわ。それでいながらなぜその名誉を持って、おしまい

「水戸のことをいっているんだね」

大西洋に置いてきたんだ、一体君はいつ頃から水戸を愛していたんだね」

「もう古いことよ。水戸がうちへ下宿するようになって間もなくだわ」

「これは愕いた。水戸はちっともそんな気配を見せなかったのでね」

でよ。あたし達の間はまだ何でもないし、第一水戸さんはご存じないのよ」

はお言葉、痛み入る。しかしエミリー、実をいえば僕も水戸をひとり残して来たのをたいへん後悔しているんだがね」

をとっている。そのオーキー学士の声が海水を伝わって水戸記者の耳にもよく入る。

ホーテンス記者と水戸記者はワーナー博士のすぐ後ろにぴったり寄り添うようにして歩いている。博士

ホーテンス記者と水戸記者は、その計器を覗き込もうとしたが窮屈な潜水服をつけているの

ワーナー博士とオーキー学士と一人の護衛の組に入った。水戸記者の方は二人の学士と共に左隊に入った。

ホーテンスと水戸記者は、右隊と左隊とに分れた。ホーテンスは、ワーナー博士と

、三十分ほど時間が経ち、そこで小休止となった。水戸は、潜水服の中に温めてあった牛乳と甘いコーヒーを、ゴム管で

水戸記者もようやく潜水服に慣れ、前屈みになって歩くのが楽であることも

水戸は彼を認めて、名を呼んだ。そのホーテンスは途中急いだと見え

快刀乱麻を断つの態で解け去るかもしれないのだ。水戸記者は、轟く胸を抑えつつ軟泥を蹴って前進した。

水戸記者は誰よりも早く転がった方であるが、それは彼が誰より

と、突然水戸は背後にがんがんと連続的な衝撃を受け、身体がくるくると回転を始め

くるくるくると水戸の身体は転がって行く。何処とも行方は知らずに……。

水戸記者は激しい戦慄に襲われながら、真相を知ろうと努力した。

、この光芒の中にありありと捉えられた。彼等は水戸の横たわっているところから約二、三十メートル距った地点を、ばらばらに

海水は硝子のように澄みわたっていた。そして嗚呼、水戸は懐しい者の姿を見たのであった。潜水服に潜水兜をつけ

飾窓のようなものから、探照燈のような強い光線が水戸の頭上を飛び越してさっと外へ投射された。すると前方が真昼

水戸は、彼等が怪物たちが放出する光線か何ものかのため、身体の

水戸は、今も自分が怪物団に見つけられはしないと危惧しながらも

そこで一切の事情が分かったような気がした。水戸が今まで横たわっていたところは大きな城壁の真下ともいうべき場所だった

と、水戸記者は思った。彼はむっくり起上って、始めてあたりをよく見廻した。

十メートルばかり横のところが爆発したように思った。水戸は周章ててその場に寝た。

突然大砲を撃ったような大きな音が聞こえた。そして水戸が立っているところから十メートルばかり横のところが爆発したように思っ

例の怪物が潜水服を着た姿なのであろうと、水戸は諒解した。

いる船員を軽々と引張って、こっちへ引返してきた。水戸は城壁の中に引きずり込まれた五名の仲間を数えた、もうそれ

逆さになった潜水服の硝子越しに、水戸はホーテンスの無念の顔をちらと見た、だがどうする事もでき

のを見るに忍びなかったけれど、もし今起出せば、水戸自身もやっぱり俘囚の仲間入りをするに決っていた。だから忍び難いこと

水戸記者は、よっぽどその場に躍出し、ホーテンス記者を奪還しようかと思った

、無気味な赤味がかった光を外に投射している。水戸はその影線を選びつつ、しずかに匍出した。彼は観測器械の

水戸記者はその方へ歩み寄った。相手は倒れたまま動かない。死んでいる

団のために搬び去られたものとばかり思っていた水戸は非常に意外にも感じ、そして大きな拾い物をしたことを悦んだ、

水戸は、博士の身体を空気服の上から強くゆすぶった。が、反応は

て、博士の大きな身体を背中にかついだ。重かった。水戸の肩は裂けそうに痛んだ。四五歩前進したとき、彼の足

水戸はやむなく博士の遺骸を背負って後退をつづけることに決めた。彼は博士

博士の身体が動き出したのを、水戸記者はすぐに見て取った。彼は喜びの声をあげて、博士

「ワーナー博士。気がつきましたか。僕は水戸です。お怪我はありませんか」

「ああ、水戸君か。ここ……ここは何処なのかね」

水戸は、それについてすぐ応えるべきことばを知らなかった。それを聞けば

水戸記者は、苦しさを怺えながら、博士に一伍一什を物語った。

と、水戸記者は、報告のあとで彼の一刻も早く知りたいと思っていること

水戸は問い返さないでいられなかった。

水戸がせきこむようにして訊いた。

「水戸君。生物が棲息し得る惑星というものは、何も火星だけに限ら

水戸記者は大きく溜息をついた。

「それはねえ水戸君。それは希望的観測というもんだよ。われわれは優れた者の

「水戸君。君のその信念は正しいと思う。そして君の熱情が、われわれが

水戸記者は、始めて晴々とした気持になって、そういい切った。

「うむ。すまないねえ、水戸君」

が二つ、もつれ合ったような恰好で、博士を背に水戸は深海軟泥につまづきながら蹌踉と歩みはじめた。

ていないが、四囲の情勢から憶測すると、まず彼水戸の運命は芳しからぬ方向を指しているとしか思われない。

にされた戦慄すべき怪人集団の暴行。彼女の愛人水戸の安否は今のところまだ確められていないが、四囲の情勢から憶測

「あら、うれしい。水戸さんから……」

、水戸の話だと思っちまうんだね。違うよ。水戸から手紙が来たんだったら、すぐ電話をかけるよ」

「何でも皆、水戸の話だと思っちまうんだね。違うよ。水戸から手紙が来た

の意見を徴するんだ、生憎水戸がいないから代りに水戸夫人の卵さんに伺ってみた次第だがね」

。水戸がいれば早速彼の意見を徴するんだ、生憎水戸がいないから代りに水戸夫人の卵さんに伺ってみた次第だが

「うん。水戸がいれば早速彼の意見を徴するんだ、生憎水戸がいないから代り

「はいはい、よくご承知で……。水戸君とは違いましてね」

「……おお、これは水戸のナイフだ」

水戸はドレゴの家に隠れて生活することとなった。

その翌朝は、彼に伝えることに成功した。だが水戸は一笑に附しただけであった。ドレゴは不満であった。東洋人

ドレゴは、水戸の顔を見るなりエミリーの恋を水戸に伝えたく思ったが、仲々その機会がなかった。それでもその翌朝

ドレゴは、水戸の顔を見るなりエミリーの恋を水戸に伝えたく思ったが、仲々その

へ洩らすようなことは絶対にないと力説したが、水戸は頑固にそれを受入れなかった。そしてソ連へ入国する機会を早く得て

かというのだった。ドレゴは反駁して、エミリーは水戸のためなら水火も辞せない女だから、秘密を他へ洩らすようなこと

エミリーに一度会ってやることを薦めもしたが、水戸は一層強くそれを断った。サンノム老人の下宿へも帰れない現状におい

どういうものか、ケノフスキーからの返電は一度も来なかった。水戸は、見苦しい焦燥の色も見せはしなかったが、彼は次第に無口

進めることになった。この日は、実にワーナー博士が水戸のために海底より救い出され、気息奄々たる身体をサンキス号の船上に移し

。そこで博士と三名の生残った助手と、それに水戸を交えた四名が上陸した。

、アイスランドへ赴かせたのである。そのわけは、既に水戸がドレゴに語ったところによって朧気ながら輪郭が出ているが、或る

このときワーナー博士は、思う仔細があって、水戸を手放し、アイスランドへ赴かせたのである。そのわけは、既に水戸が

、アンダーソン教授とその三人の助手、それからドレゴ記者、水戸記者、それにエミリーだった。ケノフスキーもその一行に加わっていた。

のだ。この快挙を具体化させた者は、ドレゴ、水戸、エミリーの三人と、太っ肚のケノフスキーだった。彼等間の友愛

水戸が痩せ我慢を見せた。エミリーが二人のうしろから、火酒の壜を差出し

殿御を先ずもって介抱する義務があるからね。おい水戸。エミリーの言葉を聞いていたかい」

水戸が目を輝かせた。

をいっているらしい。エミリーはそんなことは知らないで、水戸の背中を後から抱えるようにしている。――怪人集団は、厚い

のようなものが開いていた。それはこの前に水戸が海底において認めたあの部屋らしかった。その飾窓の中には、

―エミリーはそれを覗いた瞬間、はげしい嘔吐を催した。水戸が愕いて、身体の向きを横にかえると、彼女を抱えてやった

エミリーは水戸にしがみついて、歯をぎりぎりいわせた。

。それは水戸がエミリーを嫌っているわけではなく、水戸は結婚という問題をこの十年あまり全く考えたことがないためであっ

がさんざん説きつけてやっと結実に至ったのだった。それは水戸がエミリーを嫌っているわけではなく、水戸は結婚という問題をこの

であるが、これはそう簡単なことでなく、殊に当時水戸が仲々うんといわなかったのを、ドレゴがさんざん説きつけてやっと結実に至った

て置くのがいいかと思われることは、エミリーが遂に水戸夫人となったことであるが、これはそう簡単なことでなく、殊に

てしては到底解答が出来ないものだった。だから水戸記者が初めからこれを「地球発狂事件」と命名したのは的中だっ

それからもう一つ、水戸記者が、かかる事件を探訪して、「あのような事件を肯定するため

浦賀

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の船がアメリカ大陸に到着する前に等しく、また黒船がまだ浦賀沖へ姿を見せる前と同じ状態にあることを知るべきである。何時