麻雀殺人事件 / 海野十三
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助教授の対門にいる慶応ボーイで水泳選手をやっている松山虎夫だった。
「今日は、ちっともいいのが来ないわ」と松山の左手に坐っていた川丘みどりが、真紅に濡れているような唇
第二は、松山がスポーツ好みで、
と松山が大声で叫んだので、みると、指の尖端を口中に入れ
。例の仲間のうちで、川丘みどりをスポーツ・マンの松山虎夫と、星尾助教授とで張り合っているという世間公知のかたわら、園部も
、お、おれは」と其の時まで独り黙っていた松山が苦しそうに呻いた。「おれは頭が痛い。眩暈がする。少し
みどりを恋してるのかしら――園部や、星尾や、松山などと同じように。
一本歯の抜けたような松山の空席が、帆村の眼に或る厭な気持をよびおこさしめた。それ
頭が痛むなどと病気になったのであろうか。果して松山は病気なのかしら。帆村の脳髄のうちには、何時の間に
。なぜに川丘みどりが真蒼になってから、急に松山も頭が痛むなどと病気になったのであろうか。果して松山は病気
松山といえば、どうして彼は帰ってこないのであろう。なぜに
園部さんにシンチャンは、今帰るからって帰ったばかりよ。松山さんだけ奥に寝ている筈よ」
「ナニ、松山さんは本当に病気だったのか」
「だってシンチャン達、遠いのよ。松山さんだけは、直ぐそこだから、そいでもいいのよウ」
一つ敷いてあった。頭が痛いというのに、松山は頭から夜具をひっかぶって寝ていた。
「松山さん、松山さん、どうですか、気分は」
「松山さん、松山さん、どうですか、気分は」
と帆村は、だんだん声を大きくしていったが、松山はウンともスンとも返事をしなかった。
かえすと、障子をガラリと開け、靴のままヅカヅカと、松山の寝床に近づいたが、ポケットから点火器をとりだして、カチッと火を
、そこには最早あの活々とした朗かなスポーツ・マン松山の顔はなかった。顔面はドス黒く紫色に腫れあがり、両眼は険しくクワッと見開い
淡黄色い光に照し出された一つの顔は、たしかに松山虎夫の顔であるには相違なかったけれど、そこには最早あの活々と
やがて探偵は、しずかに立って松山の死んでいる室を立出でて、又コトコトと音をたてて階上へとっ
「まア、松山さんが死んでるんですって!」
隆起し、すこし赤味が多いのを発見した。これは松山が、白布の張りかえのときに「痛いッ」と叫んだところのもので
秒も惜しいという風に、階下へ降りて行って、松山の屍体を入念に調べあげた。別に特別の発見もなかったが、唯
彼は卓子の下から出ようとして、不図、みどりと松山の境界線にあたる卓脚の蔭に落ちていた針のない鋲の頭
た麻雀卓子について綿密な取調べをしてみた。松山の坐っていた場所については特に注意を払い、布をひっぱったり
屍体の調べがつくと彼は階上にとってかえして、松山達が使っていた麻雀卓子について綿密な取調べをしてみた
事件の詮議がはじまることとなった。帆村探偵は、松山たちの動静につき、その夜見ていたままを、雁金検事と、
そこでいよいよ松山虎夫変死事件の詮議がはじまることとなった。帆村探偵は、松山たち
いろいろ意見が出たうちで、松山は自殺したものでないという点では、誰もが一致した
それでは、松山虎夫は他人から殺害せられたものと仮りに定めるとすると、一体誰
それに松山のポケットから出て来た手紙によると、松山は川丘みどりに対して、大分優越権をもっているらしいが、この二
前後して、気持がわるくなった点だね。それに松山のポケットから出て来た手紙によると、松山は川丘みどりに対して
「おかしいと云えば、川丘みどりが、死んだ松山と前後して、気持がわるくなった点だね。それに松山のポケット
お父様の間についているそうです。しかし、みどりさんは松山さんが余り好きではないらしいのです」
ところへ、みどりさんがお嫁にゆくという話合いが、松山さんとみどりさんのお父様の間についているそうです。しかし、みどりさん
の補助をしているんですって。それは何でも松山さんのところへ、みどりさんがお嫁にゆくという話合いが、松山さん
「松山さんは、みどりさんのお家に沢山の補助をしているんですって。
「それでは、みどりが松山に毒を盛ったとすると、どんな方法によったんでしょうか」と
みどりが毒薬を入れることは訳のないことだ。君、松山のつかった湯呑について分析を頼んでほしいね」
「松山が気をゆるしているとすれば、彼の湯呑へみどりが毒薬を入れる
「しかしどうしてそれが松山の身体へ入って行ったでしょう」
何事かを思いうかべるかのように下唇を噛んだが「この松山虎夫は牌を持ってくるときに、拇指の腹でこの彫りのところを
殺したか、それを説明したのに過ぎません。松山が誰に殺されたか、それはすこしも判っていない。こんなに
改めた。「私のこの説は、犯人がどんな方法で松山を殺したか、それを説明したのに過ぎません。松山が誰
「松山の死体解剖の結果、自殺ではなく他殺であることが判りました。
に針が逆につきぬけて拇指をプスッと刺し貫く筈です。松山は犯人の注文どおりに拇指に傷をこしらえてしまったのです」
「松山の指紋はハッキリ附いていますが、其の外には誰の指紋も見当り
「すると犯人は松山にその鋲をつかわせる機会を覘っていたことになるね」と警部
「そりゃそうだろう。星尾には松山を殺す動機がすこし薄弱すぎる」
で買われてゆくのでは厭です。併し、わたしは松山さんを殺した覚えなんかございません」
ではありませんか。毒物のことは存じません。松山が死ねばよいと思うかとおっしゃるのですか、それは私にとって
出所を確かめる鍵は、どこにも見当らなかった。随って松山殺しの犯人は星尾を最も有力とし、川丘みどりを第二とし、
帆村は彼を前にして、松山虎夫殺害事件の詳細を細々と語り出した。
か。一つは、無論、これで傷口をこしらえた故松山虎夫君の指紋です。今一つは彼の指紋ではない。この鋲
「すまない、松山君!」
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はお得意の筈です。それに星尾の父親というのが神戸に居ますが、これは香料問屋をやって、熱帯地方からいろいろな香水
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いるような暑さだった。その暑さのなかを、新宿の向うに続いたA町B町C町などの郊外住宅地に住んでいる
を皆よせあつめて来たかのような精力的な新開地、わが新宿街は、さながら油鍋のなかで煮られているような暑さだった。
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大東京のホルモンを皆よせあつめて来たかのような精力的な新開地、わが新宿街