電気風呂の怪死事件 / 海野十三

電気風呂の怪死事件のword cloud

地名一覧

銀座

地名をクリックすると地図が表示されます

やって来たのだった。というのは、前夜、銀座あたりを晩くまでのそのそとほっつき歩いた疲労から、睡眠も思ったより貪り過ぎ

赤羽

地名をクリックすると地図が表示されます

司法主任の赤羽直三氏の蒼白な顔が、何時の間にか交っていた。

赤羽司法主任は、たった一人でつかつかとその屍体に近づいて調べてみた。

面に、何がなし深い恐怖と不安が漂い初めたのを、赤羽主任も一通り看取する余裕を持っていた。

、吹矢を打ち込む隙間があろうとも思われなかった。と、赤羽主任の頭にさっと閃いたのは、由蔵が姿を見せないという

部下の一人に耳打ちした赤羽主任は、次にも一人の部下に、容疑者として由蔵の逮捕方

その二人はそれぞれの役目に就くべく其の場を去ると、赤羽主任は、向井湯の主人と女房を眼で呼び寄せた。

赤羽主任の訊問に、はじめて我に返った両人は、再び指し示されたその女

、一同は女房と共にはっと眼を上げた。そして、赤羽主任の眼が女房の言動に何事か関心を持ったらしいことに気が

赤羽主任の声に、一同は女房と共にはっと眼を上げた。そして、

てしまった、という様な不安を以て、まじまじと赤羽主任の眼を視返した。

赤羽主任にそう云われて、今度は眉を顰めながら、女房は再びチラリと

赤羽主任は、無残につぶされた女の銀杏返しの髪に視線を送った。

と、その時、赤羽主任の眸はパッと大きく見開いた。というのは、その今しも見つめ

てみた。と、まさしく、ポトリと音がして、赤羽主任の掌上には、一滴の血潮が、円点を描いた。

流れ出したではないか? 思わず掌を出して、赤羽主任はその上へ拡げてみた。と、まさしく、ポトリと音がし

一層頻繁に落ちて来る血潮を受け止めながら、赤羽主任は反射的に天井を見上げた。それに誘われて傍の人々もひとしく

赤羽主任は、唇をヒクヒクと痙攣させ、顴骨の筋肉を硬ばらせながら、

じゃないか、落ついて考えるんだッ!」と、赤羽主任は、焦れったそうに、低いながらも力強く詰問した。

赤羽主任は屹となって、共に天井の血の穴を見上げたが、刑事

と、赤羽主任は、真先に立って裏口へ行こうとしたが、何事かに気

赤羽主任は、あちこちに転っている桶類を跨いで女湯の脱衣場へ行くなり

赤羽主任は躍起となって、番台横の三和土を覗いてみたが、その

赤羽主任は脳髄の痺れるのを感じた。が、その疑問は疑問として

やがて、発見者の刑事を先頭に赤羽主任や刑事連は、釜場の梯子を上って行った。向井湯の主人

赤羽主任は、殆んど迷宮に途惑った人間のように、甚しく焦立ちながらも、決して

赤羽主任は懐中電灯を藉りて、由蔵の屍体の周囲を丹念に調べてみ

屍体の頭髪を掴んでズルズルと左へ曳き寄せた。と、赤羽主任は、吹矢の一本を取上げて、その尖端で由蔵の頭のあっ

赤羽主任は、その丸い穴から下を覗いてみた。果せるかな、眼

やがて、赤羽主任は、その節穴をふさいでいた血染めの栓を、吹矢の先に

ものではないという様なことも判って来た。赤羽主任が、尚もその先を辿って見ると、その電線の一端は、

赤羽主任は、つかつかとその電線の所在箇所に近寄って色々と調べてみた

を遂行したものであろう。――と、これが、赤羽主任が匆々にまとめ上げた推理の筋道であった。

赤羽主任の脳裡には、漸く事件の綾が少しずつ明瞭になってくるの

赤羽主任は考える。――それから由蔵は、何かの異常に気がつい

赤羽主任は考え疲れて、頭がフラフラするのを覚えながら、一同と共に

由蔵の部屋から釜場へと梯子を降りている時、赤羽主任は、奥の居間から、湯屋の女房が茶盆を持って出て来る

――そう考えながらも、赤羽主任は、孰れにしろ、その惨殺された女の着衣と下駄を探す

頬の辺りを変に歪めて、いやらしい笑いを見せた。赤羽主任は云われるままに梯子を昇って行ってみた。

押入の隅から望遠鏡のサックを曳っ張り出した。――赤羽主任の頭は愈々混乱して来るのであった。……

来た人間が、やあと声をかけた。それは、赤羽主任のよく知っている警察医の山村であった。

「御苦労さまで、どうも。所で赤羽さん、あの感電騒ぎをやった井神陽吉という男ですな。大分意識も

赤羽主任に問われて、規律的に「はい」と返事した彼は、

を知って苦笑しながら、その頁を開いたまま手帖を赤羽主任に手渡した。

と、見る見る赤羽主任の面には輝くばかりの喜色が漲った。

断乎として云い放った赤羽主任の顔を、事情の判らない一同は不審そうに瞶めた。

益々意外な赤羽主任の言葉、しかしそれはこうであった。

初め赤羽主任は、村山巡査の手帖を受け取った時、感電被害者の井神陽吉の身元

赤羽主任は、それをチラと見るや、忽ちにして脳裡に蟠ってい

の懸念もあるので、色めき立った刑事連は、赤羽主任の命を待つものの様にその面を仰いだ。

と、赤羽主任は、何故か悠然と構えて急ぐことを欲せぬもののようである

だが、赤羽主任の推定が真実であったことは、一同が向井湯を引上げて本署

もののように報告する一人の刑事の言葉を聞いて、赤羽主任はおっ冠せて云った。

満足そうに同行の部下を顧た赤羽主任は、初めて愉快らしい笑みを浮べた。