○○獣 / 海野十三
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の右手には、用心のたしにと思って、この夏富士登山をしたとき記念のために買ってきた一本の太い力杖が握ら
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深夜の大東京!
いま大東京の建物はその青白い光に照されて、墓場のように睡っている
の住民たちは今グウグウ睡っているのに、それに大東京の建物も街路も電車の軌道も黄色くなった鈴懸けの樹も睡って
大東京の三百万の住民たちは今グウグウ睡っているのに、それに大東京の
ッと、ほの赤い光であった。二百メートルほど先の、東京ビルの横腹を一面に照らしている一大火光であった。はじめは火事
息をした。だから敬二は、窓硝子の怪音と東京ビルの横腹を照らす火光とが同じ力の元からでていることを知っ
いきなりムクムクと下から持ちあがって来たから、さあ大変! 東京ビルの横腹を染めていた大火光は、その盛りあがった土塊のなかから
のなかにお目見得したからである。それは丁度、東京ビルの横に、板囲いをされた広い空地の中であった。そこ
敬二は、寝衣を着がえて、早速あの東京ビルの横にとんでいってみようかと思った。でも、すぐそう
と、金釦のついた半ズボンの服――それはこの東京ビルの給仕としての制服だった――を素早く着こんだ。そしてつっかける
崩れる東京ビル
うしろをふりかえってみると、さあ何ということであろう。東京ビルの入口に立っている太い柱の一本が、下の方からだんだん
彼は、東京ビルを背にして立っていたのであった。ところがうしろに
それは、東京ビルの玄関が、下の方からズンズン抉られてゆくことであった。
しなかったが、ただハッキリしているのは見る見るうちに東京ビルが崩れてゆくという奇怪な出来ごとだった。火災報知器が鳴らされた。
酔いもさめきった青い顔をして、次第に崩れゆく東京ビルを呆然と見守っていた。警官にも、何事が起っているの
誰も、この東京ビル崩壊事件の真相を知っている者はなかった。
東京ビルの崩壊は、崩れおちるまでに相当時間が懸ったので、幸いにも
それから一時間ほどして、いよいよ博士が東京ビルの崩れおちた前にあらわれた。博士は強い近眼鏡をかけて、鼻
さあ、只今そういうところはありません。今のところ、東京ビルだけで崩れるのは停ったようです」蟹寺博士はそれを聞いてい
――東京ビルがカチカチカチッと崩れはじめたのは、それから間もなくのことだっ
――赤い眼をもった二つの大怪球と、東京ビルの崩壊とは、別々の異変なのであろうか。それともこの
翌日の朝刊新聞には、東京ビルの崩壊事件が三段ぬきの大記事となって、デカデカに書きたてられ
「深夜の怪奇! 東京ビルの崩壊! 解けないその原因!」という標題があるかと思う
敬二少年は、東京ビルの崩れた前でその新聞を一つのこらず読みあさった。しかしその
だ。もう大分掘ったよ」そういったのは、同じ東京ビルのコックをしていたドン助こと永田純助という敬二の仲よし
うん、それはネ――」と敬二少年は、昨夜この東京ビルの崩壊したことは新聞に書いてあるが、彼がそのすこし前
ビル崩壊の謎はこれか? ○○獣を見た東京ビル主任永田純助氏語る――
やらんけりゃならん。俺という支配人が居るのに、東京ビルの主任だなんて新聞にいいやがって、怪しからん奴だ」
と見る間に、例のカリカリカリという怪音をあげて、東京ホテルの裏に立っている大きな自動車のガレージを噛りはじめた。
を一刻も早く見たくてたまらなかった。それで目下、東京ホテルの裏口を暴れまわっている○○獣のことは、折から現場に着き
敬二が○○獣の写真をもって、再び東京ホテルの裏口に帰ってきたときには、そこには物見高い群衆が
その甲斐があってか、まもなく東京ホテルを中心として、その周囲に深い穴がいくつとなく掘られて
で○○獣が暴れれば、穴がますます大きくなり、やがて東京市の地底に大穴が出来るだけのことじゃないんですか」
上に積ませた。そしてそのトラックは騒ぎを後に、東京ホテルの広場から走りだした。その後からは、幾十台の自動車がぞろぞろと
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は、五階建ての、ネオンの看板の消えている、銀座裏の、とある古いビルディングの屋上に近いところにあって、まるで猫の目玉
まるで夢のような、銀座裏の怪奇事件であった。