ロンドン 本郷 箱根山 奈良 山形 東京 銀座

「ロンドンですよ」

「なに、ロンドン？　イギリスのロンドンのことかね」

「なに、ロンドン？　イギリスのロンドンのことかね」

「こんなところへ君が入ってきては困るね。おい本郷、松倉、いったい何のために戸口をかためているのか」

「そんなことをいう奴は、よろしく箱根山を駕籠で越す時代へかえれだよ。蜂矢君、もし幽霊がでなかったら、君

大理石の棚の上には、黄金の台の上に、奈良朝時代のものらしい木彫の観世音菩薩が立っている。

をつとめるんだ。もっとももう一人補助者として金庫番の山形君をつけてやろう」

柔道四段の猛者の山形巡査が、奥の方から手をあげて悦ぶ。古島老刑事は、

「おい山形君。そんなことをいうが、大丈夫かい」

「ああ、それから山形君」といって金庫番の柔道四段の青年を呼んでポケットから黄表紙

のだった。その隣に、幽霊助手を拝命した猛者山形巡査が、これは古島老刑事とは反対に、大入道であれモモンガアであれ

のようにちぢめていたが、そのとき隣にいた山形巡査が古島の袖をひいて注意をしたので、それで始めて

この場の怪奇をながめつくしていた幽霊係の助手の山形四段が、雪子の姿を追って後から組みつこうとしたが、それ

金庫番の山形は、鼻血をだして赤く腫れあがった自分の鼻を指した。

ないように手当をしてくれ。ここじゃ困るから、すぐ東京へ移せないものかね」

徹底的にしらべることにする。幽霊事件なんてものが、今どきこの東京にひろがっては困るからね。あの川北が発見されたのがきっかけ

「あいにく東京にいなかったもんで、失礼しました」

銀座の薬局がおそわれたことがあった。それは白昼のことであった