北海道 日本橋 恵比寿 上野 東京 駒込 向島 浅草

宿屋が並んだ表通りを一寸裏へ入ると、どこでも北海道の開墾地へ行ったような有様なのであった。

昌太郎が、北海道へ旅行しなければならなかった。その留守の間、このようなまさ子一人で

詮吉は日本橋の方に商人暮しをしているのだが、絵でも習いたい、

から手の届く板の間に黄色い泥のようなもので拵えた恵比寿がいくつも乾してあった。

弟でも誘い出しどこかで夕飯をたべるつもりで、なほ子は上野へ着くと両親の家へ電話をかけた。

「今上野なの――貴方出て来る気ない？」

家へ帰るのは如何にも詰らなかった。真直に夜の東京の中心に戻り、燈火と人間と、明るく暗く錯綜に揉まれたかった。

真先に詮吉が東京へ帰った。なほ子もやがて立つことになったが、単調な山の中

植木屋が入ったと見え、駒込の家の玄関傍に、始めて見る下草の植込みが拵えてあった。

た事など、まさ子は悠り、楽しそうに語った。向島時代は、なほ子も聞いた話が多かった。それから、昌太郎が外国へ

氷砂糖を皆食べて叱られた。その洋画や飾棚が、向島へ引移る時、永井と云う悪執事にちょろまかされたが、その永井も

ちょろまかされたが、その永井も数年後、何者かに浅草で殺された事など、まさ子は悠り、楽しそうに語った。向島