突貫 / 島崎藤村
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私の頭脳の内部に働いて居る。水車小屋を隔てゝ相生町の通の方には、ザワ/\ザワ/\人の通る足音を聞く。
空に響き渡つた。入営するものを寄せ集めの相図だ。相生町の坂の方からは、送別の旗を先に立て、近在の壮年らしい連中
南向の雨戸を開けて見た。暗い雪に包まれた相生町の通りの方には紅い灯がいくつも/\動いて見えた。
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青森から先の航海が絶えて居るや否やは東京の旅舎でも解らない
青森へ着いた。信州の方へ度々手紙を寄した未知の若い友は
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東京の友人が戦地へ赴く前に寄した別離の手紙は私の心に
小諸を発つ。斯の旅の危険であるか奈何かは、東京まで行つて見た模様でなければ解らない。兎に角、小諸を発つことに
東京へ着いた。カアキイ色の軍服は初めて私の眼に映つた。神田の
青森から先の航海が絶えて居るや否やは東京の旅舎でも解らない。兄も久し振で逢ひに来て、気を
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通らないやうにして居た。塾へ行くにも、小諸の城門の方へ取らないで、別の踏切を通ることにして居
ことが一息に私の胸に浮んで来た。私は小諸の町裏にある田圃側に身を置いて居るやうな気がする。そこ
東京まで行つて見た模様でなければ解らない。兎に角、小諸を発つことにする。
いよ/\函館へ向けて小諸を発つ。斯の旅の危険であるか奈何かは、東京まで行つて見
で笑話のやうにするのを聞いて来て、私は小諸の家の方へ引返してから其話をお島にして聞かせた
私が真実に小諸を去らうと思ひ立つて居ることは塾の同僚に知れて来た。その中
の熱狂に比べると、町もシーンとして来た、小諸停車場の前で吹く喇叭の音が町の空に響き渡つた。入営する
には川船を待つ人達が居る。そこには私が小諸から連立つて行つた二人の娘が居る。紺色に染めた真綿を亀の甲
。あの時はずつと川下の方まで乗つて行つて、小諸辺とは余程様子の変つた飯山の町を見た。
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た。カアキイ色の軍服は初めて私の眼に映つた。神田の宿へ来て見ると、戦争の芝居の噂などがされて居る
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末広町には阿爺の家の懇意な陶器屋がある。そこの旦那に誘はれ
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紙を展げて見た。私が写さうと思つて居る千曲川の川上から川下までのことが一息に私の胸に浮んで来た。
捗取つた。私の眼前には油のやうに流れて行く千曲川の下流の水がある。霙が蕭々降つて居る。対岸の蘆、河