湯河原 赤城 高崎 榛名湖 渋川 川越 鎌倉 東京 小諸 湘南

小さな旅に出掛ける。わたしの足はよく湘南地方へ向く。湯河原あたりへはよく二三日の保養に出掛けて、あの温泉地で長い仕事の疲れ

のは、次第に近く山容をあらはして来る榛名、妙義、赤城なぞの山々の眺めである。いつ汽車で通つても、あの利根川の流域

た苗代のあざやかなのも眼についたが、上野駅から高崎まで二時間半ばかりの平野の汽車旅はかなり単調な感じがする。その単調

。ケエブル・カアで登つて行つて見れば、山上には榛名湖のやうなところがあつて、鯉、鮒、さてはわかさぎなぞの養へるほど

わたしたちが渋川から伊香保に着いたのは、晴れたり曇つたりするやうな日の午後で

も乗せた。その女中は歯の療治に行きたいが、渋川まで一緒に乗せて行つては呉れまいかと言ふ。これも東海道の旅には

た。さういふわたしは自分一人ぎりの旅でもない。川越から上京した老母に留守を頼み、妻同伴でこの保養に出掛けて来た

旅の鞄の中に入れて行つた。それは同君が鎌倉での日記と一緒に合巻としてあるもので、かねて非売品として知人

わたしは避暑の旅に出たこともなく、夏は殆んど東京の町中に暮してゐるが、そのかはり春蚕、秋蚕の後の骨休めを

を小諸の山の上に送つたことのあるわたしが、東京への往き還りに、あの上州の山々を汽車の窗から望んだことも忘れ

、帰りの土産には伊香保名物の粽、饅頭、それから東京の留守宅の方にわたしたちを待ち受けてゐて呉れる年寄のために木細工

つて、また別の趣がある。曾て七年の月日を小諸の山の上に送つたことのあるわたしが、東京への往き還りに、

てはちよい／＼小さな旅に出掛ける。わたしの足はよく湘南地方へ向く。湯河原あたりへはよく二三日の保養に出掛けて、あの温泉