根岸 東京 新橋 上野 隅田川

、葉を撫でたりして居た。その草花もお節が根岸の伯母さんの家へ行つた序に買つて来たものであつた。

居たんぢや仕様がないからと思つて、叔父さんが東京へ出られるやうにして遣つたんサ。愚図々々して居る時ぢや

……お園さん（亡くなつた甥の妻）もいよいよ東京へ嫁いで来たし、節も近いうちにはお娵さんに成るし

お父さんも急いで東京へ出て来た。お父さんは旅館の方から叔父さんの家を訪ねて

を取替へる面倒が起りますし、ナカ／＼一日で東京を廻るなんて訳にゆきません。馬車の方が反つて簡単です。左様

お婿さんの生家の方にも居て、復た一旦東京の方へ引返して来た。最早お婿さんでも無かつた。旦那

程日に焼けもせず、相変らずの元気で、東京へ着いた晩に旅館から叔父さんの家までお栄を送りに行つて

多分東京へ帰るのは八月の六日頃に成るだらう、と手紙で叔父

見送らうと言つて呉れた。お節が旦那さんと一緒に東京を発つにも矢張叔父さんの家から発つことに成つた。

お婿さんの新橋の停車場へ着いたといふ日、お父さんはその話を持つて、出迎へらしい

て来て居ることが知れた。お節は妹と連立つて上野の停車場へ迎へに出掛けた。心待ちにした日よりは一週間ほど早く

「今朝の隅田川はまるで湖水のやうだつた。どうも実に好い心地だつた。」