筑波山 江戸 行徳 妙義山 古河

犬を打つ童、左に流れる刀根川の水、前に聳える筑波山、北に盆石のごとく見える妙義山、隣に重なッて見える榛名、日光、これら

思われるもので，母があのように賞めちぎる娘、たおやかな江戸の人、その人と話をする時には言葉使いに気をつけねばなら

は言葉使いに気をつけねばならぬという、その大した江戸の人はまアどんな人なのであろうか？　早く遇いたいもの、見たい

前の日となると数ならぬ下女はしたまでが、「江戸のお客さま、お客さま」と何となく浮き立ッていた，まして祖母や姉なぞ

「お嬢さま、お嬢さま！　お客さまが、江戸の」

ということもなくその話と言ッては藩中のありさま、江戸の話、親類知己の身の上話、またはてんでんの小児の噂などで、さ

「お姉さま、お姉さま、江戸のお姉さま！　御覧なさい。この花はね私が植えたのですぜ

かというとこうで，もウ二三日過ぎると叔父も江戸へ帰るにより、何か江戸土産になりそうな、珍らしい面白い遊戯を娘に

ウ二三日過ぎると叔父も江戸へ帰るにより、何か江戸土産になりそうな、珍らしい面白い遊戯を娘にさせて帰したい，が何

田舎の小児には、それが大した遊戯なので，また江戸のような繁華な都に住んでいて野山を珍らしく思う人にはやはり面白い

ところだ。娘は姉に向ッて言うには，「このごろ江戸で名の高い馬琴という作者の書いた八犬伝という本を読みまし

なる人が大層叔父の気にかなッたとやらで、江戸へ帰ッたらば、さらに仕度をさせて、娘を嫁入らせるということ

となッた，明日の晩は叔父も娘も船路で江戸へ帰るから、今宵一夜が名残りであると、わずか十里か十五里の江戸

今宵一夜が名残りであると、わずか十里か十五里の江戸へ往くのを天の一方へでも別れるように思ッて、名残りを惜しむ一同

娘は江戸へ帰ッてから、ほどなく古河へ嫁入りしたが、間もなく身重になり

かの犬飼犬塚の両犬士が芳流閣上より転び落ちて、つい行徳へ流れついたことを話して、その犬士の流されたところもここらで

刀根川の水、前に聳える筑波山、北に盆石のごとく見える妙義山、隣に重なッて見える榛名、日光、これらはすべて画中の景色だ。鄙の

娘は江戸へ帰ッてから、ほどなく古河へ嫁入りしたが、間もなく身重になり、その翌年の秋虫気づいて