米 / 犬田卯

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東京

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その股引と手甲が、ことに股引が――それは昨秋東京の工場へ行った長兄がそれまで使用していたもので、全くだぶだぶ

のであった。弟の清吉は、これも十五のとき東京の工場へつとめることになって、後、電気会社に入り、いまは応召

次の日、長男の勇が東京の工場からひょっこり帰って来て、おせきの気持はどうやら転換した

て来たのである。それに、別に少しばかりの東京風の菓子。そしてそれは勝やおさよや、その他の幼い者たち

「東京の方は外米だちけか。まずくてひどかっペ。」

だ、家の相続を――」などと言ったり、「東京などへ行って……肺病にでもとっつかれて死ね、この野郎――

た。勇が工場へ――叔父清吉の行っていた東京の電気会社へ出るときまったときは、頭から反対して怒鳴り散らし、「

「はア、東京さなんど行かねえよ、こんどは遠いところさ行くんだ」と何かしら母

せきを困らせたのは、勇の食事であった。東京の食事に馴れてしまった勇は、ぽそぽその麦飯や、屑米の団子、

これはまア、本日はご苦労さんでございます」と改まった東京風の言葉で挨拶した。