地図にない街 / 橋本五郎
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老人から話しかけて来た時には、氏はかつて聞いた北海道行き人夫のことを考えていた。そしてこの老人が果たしてそんな恐ろしい人間である
ない、手を出すのじゃない、とわずかな理性があの北海道行き人夫の末路を想像させた。がその時、氏は到底その誘惑に
をもらって来るといった言葉から考えれば、正しく老人は北海道行きの人夫引き子で、もらいに行った先はその仲間の家ではない
も、到底勝つことはできなかったといっている。同じ北海道へやられるのなら、なんでもかまわずもらってやれ、とそんなさもしい気持に
のである。が老人は、氏がひそかに期待した北海道行きの話は持ち出さなかった。
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そこは日比谷公園の、元の図書館の裏にあたる木立の中であった。老人はそう
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ようにそうして歩いているうち、寺内氏はいつか浅草の公園へ来ていた。里数にすれば三里近くもあるところを
―まあとにかく行ってみるんだな。何もなかったらまた浅草へ帰って来るさ。俺はたいていあの時間にはあのベンチに行っている
氏はまた一日を浅草にかの老人をも訊ねてみたが、幾晩氏があの思い出の
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てんだからな、なあに行く必要なんかあるものか、広い東京で二度と再びあの刑事に出合うようなことはありはしない。警察
、それが一歩、四軒目の家の角を曲がると、東京の、しかも繁華なこの一角に、こんな奇妙な路地があったかと驚く
東京のまっただ中に、そんな限られた海へ出る人の一町があるのだ
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いるのをちょいと耳に挟んだのだが、なんでも麹町のさる所で、一事件が起こったというんだ。つまらない盗みな
何か説明しがたいものに惹かれて、氏は一日麹町の子爵邸を訪れたのである。そして、おお、そのわずかな行動が
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事実そんなことが許されるかどうか、また湯銭にしたって日比谷の泥棒にしたって事実あれほどぴったりとゆくものかどうか、そうして