箱根 札幌 樺太 北海道 青森 小樽

なつたお父さまは以前から拓殖の志のあつた方だ、箱根の仙石原を開墾して楮の木を植ゑ初めなすつたり、鴨の宮の池

あくる朝また四時間ほど汽車にゆられ、札幌を通り越してやつと夫の村に着きました。村ともうしましたけれど

た箪笥はまだ買ひません。春にでもなつて札幌に行つたときにともうし、それまで私の名儀で銀行にあづけて

ことに函館なぞ、昨年日露戦争が終りましてからは、樺太との連絡にも重要な港となり、外国にでもまいつたやうに

ところのやうにもうしてをりますが、どうして、北海道はなかなかひらけたところでございます。ことに函館なぞ、昨年日露戦争が終りまし

してお国のために土地を開かなければならん。北海道はまだまだ奥がひろいのだ。そして、今度は立派に独力でやつてみなけれ

土がでてまいりましたのですよ、お母さま。北海道の土は黒くて、やはらかで、生きてゐるみたいなのでございます

のことも、なにもえりにえつて流刑のひとの行く北海道くんだりまで追ひやらなくとも――などゝ、意地悪くそんな意味のこといふひとも

をおたてなすつたりなすつた方だ。お父さまはおまへが北海道の開拓者の妻になれば、ご自分の志をつぐものとおよろこびなされるで

ば、きつと、内地のやうな水田にして、北海道で使ふお米は北海道でまかなへるやうにしなければならないのだ

のやうな水田にして、北海道で使ふお米は北海道でまかなへるやうにしなければならないのだなどゝ、夢のみたいな

ずまひ、かうしてゐても目にみえるやうです。北海道はこぶしの花が満開でございます。こちらでは、こぶしのことを四季桜

くれまして、途中、前便のとほり松島を見物いたし、青森で船のでるのをまつあひだ三時間ほど停車場前の「かぎや」

たゞ青森からはしけで連絡船に移りますときだけは、ほんとうに怖しく、どうなること

、氷の上を歩くと同じなのでございます。はじめて小樽の街でその雪道に出ましたときは、どうにも滑つて歩けず

かほして冗談をもうしますので、びつくりいたします。小樽に下車したときでございました。十二月のさなかなので町は

やつぱり子供みたいなところがあるので、ほつといたしました。小樽の町は言葉のあらい、みんなけんくわしてゐるみたいな口のきゝかた