モンマルトル ユーゴスラビア ニューヨーク 関西 東北地方 巴里 東京 銀座

も彼がハンガリアへ出発する一カ月ほど前に、巴里のモンマルトルにあるクロイゲルの娘の家を訪問したことがあった。そのとき梶は

千九百二十五年のあるとき、ハンガリアとユーゴスラビア、ルーマニアの三カ国がアメリカから金を借りねばならぬ事情にさしせまられた

の利息で四億ドル借り受けに成功した。つまり、ハンガリア、ユーゴスラビア、ルーマニアの三国五千万人の信用よりもスエーデンの一マッチ王クロイゲル一個人の信用

にか奪っていたのである。一方クロイゲルはルーマニアとユーゴスラビアとハンガリアに四億ドルを貸し附け、三国から代りにマッチの専売権を取っ

が応じなかった。この事実を知ると同時にクロイゲルは単身ニューヨークに渡った。そして、アメリカの銀行家と企業家三百人を招待して彼らの

友人は幾つもの会社の重役をしていた上に関西の財界の大立物を親戚すじにひかえていたから、日本の財界の動き

附かんだけだよ。この二三日財界は大騒動だ。関西からは電報ばかりだが、誰もどうしていいか知らんのさ。こう

いる中を無雑作にシベリアを突っ走り、日本へ帰るとすぐ東北地方へ引き込んだ。彼は妻の父と母とに「ただ今帰りました」

今まで度度東北地方へ来たにも拘らず、梶はこの度ほどこの地方の美しさを感じ

たが、も早や彼に金を貸すものはなくなった。巴里はクロイゲルの自殺を報じた。しかし、フランス政府はひそかに彼を南米に

ことにも彼がハンガリアへ出発する一カ月ほど前に、巴里のモンマルトルにあるクロイゲルの娘の家を訪問したことがあった。その

梶がハンガリアから巴里へ戻って来たときは七月の初めであった。ところが、全く

。全世界を愚物の充満と見たクロイゲルの眼光がこの巴里を一望のうちに見降ろす丘の中腹に注がれたのは、いかにも革命児

設計になったものかもしれない。また彼の自殺が巴里で行なわれたからには、何事かこの家の鉄の扉がその秘密

に並んだ椅子の中に身を沈めた。会話はすべて巴里に進行している大罷業の話ばかりだ。そのとき、左の方の

梶はこのように思いながら間もなく東京の自分の家へ帰って来た。

梶が東京の我が家へ初めて戻ったときは季節は寒さに向っていた。彼

梶は友人をある会社に尋ねて今日から東京へいよいよ落ちつくことを報せにいった。この友人は幾つもの会社の重役

た。すると、あれほど大都会の中心を誇っていた銀座は全く低く汚く見る影もなかった。

「これが銀座だったのか」