この夏 / 宮本百合子
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手紙は私の留守にフダーヤが伊豆に出かけたこと、あまり愉快でなかったこと、特に宿屋の隣室に変な一
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「帰りに鎌倉へ廻り、家を見て来た。ほら、いつぞや、若竹をたべた
その辺の地理の説明がこまかに書かれていた。鎌倉といっても大船駅で降り、二十何町か入った山よりのところ、柳
楽しみにして東京に帰り、家主から返事が来ると直ぐ鎌倉に出かけた。
鎌倉は、海岸を離れると、山がちなところだ。私にとって鎌倉といえ
海岸を離れると、山がちなところだ。私にとって鎌倉といえば、海岸より寧ろ幾重にも重なって続く山々――樹木の繁っ
の重なりのせいか、或は歴史的の連想によってか、鎌倉の山は一種暗鬱なところがある。昔風な径路のついた山裾を歩い
か捕えがたい憂鬱めいたものが心に来る。それゆえ、鎌倉の明月の夜の景色を想うと空に高く冴え渡る月光に反し、黒く深く
なっていそうな山々、家のすぐ裏には、極く鎌倉的な岩山へ掘り抜いた「やぐら」が二つある。「やぐら」の入口の
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するのは、筋も何もない漫筆だ。今日など、東京へ帰って見ると、なかなか暑い。いろいろ気むずかしいことなど書きたくない。それゆえ
をしている声がした。皆葬式の仕度だ。東京で一度葬式があった。この時、私は種々深い感じを受けた
、ひとりぼっちで祭壇の前にいると、手紙が来た。東京のうちから来た。私は嬉しく、裏表をかえして見てから、封
私は、フダーヤの親切を大層うれしく感じた。東京の家は、家の建ものとしてわるくはないのだが、両隣
「そしておしまいにJ・O・A・Kこちらは東京放送局であります? ハハハハ」
私は、楽しみにして東京に帰り、家主から返事が来ると直ぐ鎌倉に出かけた。
て盛夏の空と青葉の光輝とに見とれる悦びがある。東京にいて、八月の三時は切ない時刻だ。塵埃をかぶって白け
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見て来た。ほら、いつぞや、若竹をたべた日本橋の小料理や、あすこの持家で、気に入るかどうか、屋根は茅