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平尾氏が早稲田の文科を卒業後、初めて見つけた勤め口は、大阪の造士新聞といふ小つぽけな週刊新聞でした。造士新聞は今は大阪

いふ小つぽけな週刊新聞でした。造士新聞は今は大阪のある郊外電鉄の専務取締、その当時は弁護士の紀志嘉実氏が、貧しい

知らさず、これまで住んでゐた朝鮮の家を振り捨てて大阪に身を寄せてゐたのでした。Ｏさんはこんな身体でしたから、

のに、平尾氏が恋をしました。Ｏさんは金沢在の生れで、朝鮮にもゐたといふことでしたが、いかにも

よりもむしろ神の救ひを欣求しました。で、京都に来て同志社神学校に入りました。法悦を求めて精進してゐる

ものは何ひとつ失はず綺麗に持ち出したＯさんは、京都を発ち際にその友達にいひました。

少なくとも深入りはさせたくないといつて、平尾氏の東京行を中止させようと努力しましたが、いつこくな平尾氏は何

れて黙つてゐるより仕方がありませんでした。東京行を決心した平尾氏は、旅費その他の調達を金尾文淵堂主人