大根の葉 / 壺井栄
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そして、腰かけたままのところから、ひとりでに目にはいってくる観音山の方を見るともなく眺めた。観音の山からは、ごーん、うおんうおん――
たが、お母さんの手は健の頭を押さえてむりやりに観音山の方へ向けたまま動かせなかった。
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どうしても汽船に乗ってお母さんに手をひかれて神戸へ行きたかった。
も、いっしょにつれて行ってくれた。それなのに神戸へはどうしてもつれて行ってくれない。この前のときにも、
なっている。健はどうにかしてお母さんについて神戸へ行きたいと思うのだったが、お母さんはどうしても、よい返事
健のお母さんは、今夜また赤ん坊の克子をつれて神戸の病院へ行くことになっている。健はどうにかしてお母さんに
「ええい。健も神戸い行くんじゃい。」
たりした。だが、今日はちがう。お母さんといっしょに神戸へ行けるなら、あとで半べになってもいいと思った。お母さんは
「健、そんなに神戸い行きたいか。」
「ええい、ええい、健、神戸い行くんじゃい。おばあさん家やこい行かんわい、行かん
たように匙を投げた見立てであったが、ただひとり神戸の医者が、見えないけれども光りと闇を知っているという診断を
にしてやりたいとねがった。そして、とうとう今日はその神戸の病院へ行く日なのであった。
「そう、ほじゃせに神戸い行くん、神戸のお医者さんが痛い痛い目薬さしたら目々が見えるようになるんで、健
「そう、ほじゃせに神戸い行くん、神戸のお医者さんが痛い痛い目薬さしたら目々が見えるように
ちょる。ようお母さん、またこんど、健がめくらになったら神戸い行くんのう。ほじゃせに健おばあさん家で待っちょろ。―
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「健よ、あの蒸汽はなあ、高松い行く船じゃせにお母さんは乗っとらんので。お母さんが乗っとったら、もう
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に、仕方なく縁側に出た。靴がちゃんとそろえてある。東京にいるお父さんから送ってきたお正月の革靴である。それでも健
「東京にいる。」
「ふーん、東京にいるん。東京で何しよん?」
「ふーん、東京にいるん。東京で何しよん?」
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目白が、チ、チ、と鳴きながら、蕾の赤らんだ杏の枝を渡り歩い