赤坂 本能寺 大阪 京都 代々木 東京 日比谷 銀座

の同僚がその日、叛乱軍の本部にあてられている赤坂のホテルを訪問してきたところによると、青年将校たちは目的を貫徹

たというところにあるんじゃないか、例えば明智光秀が本能寺を攻めたときだって」

「ねえ、――やっぱり僕はそう思うよ、本能寺を陥れた光秀が何故京都あたりでいい気になって戦勝の夢に酔い中国

丈吉が大阪にいる友人をたずねて東京を逃げ落ちる決心をしたのはあくる日の朝だった

かと考えあぐんでいる様子だったが、伍一あてに届いた大阪の友人からの、「ニモツトドイタアンシンセヨ」という電報を見ると、急に悲壮な気もち

からと、刑事をうまく説き伏せて伍一から旅費をうけとり一人で大阪へ立っていったが、二、三日経つと丈吉とつれだってかえってき

やっぱり僕はそう思うよ、本能寺を陥れた光秀が何故京都あたりでいい気になって戦勝の夢に酔い中国からひっかえしてくる秀吉の

がちがうようでもある。前の晩にやってきた代々木の叔母から、多吉がちかごろ近所の鰻屋の娘に夢中になってそのため

の家まで行って来よう――ことによったらその足で東京まで行くことになるかも知れないからね」

を出た伍一が、その夜の結婚披露の宴席である東京ビルデングの地下室にあるレストランの扉をあけたときにはもう控室は半数以上

かと、ひとりごとのように呟いていたが、自動車が東京へちかづくにつれて窓にうつる街の空気はしいんと鳴りをひそめながらも何処

たのは十時少しすぎだったが、伍一はこれから東京の叔母の家へゆこうという丸川をおくって郊外の駅まであるき、その

丈吉が大阪にいる友人をたずねて東京を逃げ落ちる決心をしたのはあくる日の朝だった。玄関で前かがみになっ

ことが眼に見えるようであった。森川町へゆく舟形と日比谷の交叉点でわかれると伍一はざわざわとうごく人波を押しわけてその日の朝

とはせず、名残惜しそうにあたりを振りかえっていた。銀座の表通りにはさすがにほとんど人通りはなかったが、雪はまだ街の片隅

がながれていた。もう四月も終りにちかづいて、銀座裏の酒場では「まだおそくはない」という叛乱軍の兵士に呼びかけ