村の成功者 / 佐々木邦

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地名一覧

小谷

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「水窪丈けはもう済んだ。昼から小谷へ行く。君は今道で自動車に会ったろう?」

「この田川でも水窪でも小谷でも河端は大抵家の地面だ。豪いことになるよ、これは」

鹿児島

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山が見えないものだから腰が据らない。それに鹿児島人が威張ったそうだ」

は真物だ』と言って怖がる。同じ田舎漢でも鹿児島人丈け幅が利く。お祖父さんは憤慨して帰って来てしまった

田舎漢だよ』って馬鹿にする。鹿児島出身の邏卒が鹿児島弁でやると、『この邏卒さんは真物だ』と言って怖がる。

は『この邏卒は田舎漢だよ』って馬鹿にする。鹿児島出身の邏卒が鹿児島弁でやると、『この邏卒さんは真物だ』と

東京

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「尾崎さんさ。呆れ返って東京へ行ってしまった。それぐらい目先の見える人だから、あんなに成功し

らしいよ。大伯父さんがこの村の代表だったそうだ。東京まで請願に出掛けたんだから真剣さ」

「宗像さんや安藤さんは金持だから東京の学校へでも行ける。家は違うよ。師範へ入りなさい」

につれてツク/″\感じている。自分も若い頃東京へ遊学に出掛けて中途半端で帰って来た。長男も同様、物になら

「水力電気の技師連中だよ。東京から大滝を見に態※やって来たのさ」

「しかし東京から態※見に来るようなら占めたものです」

と卓造君、この休暇中に得たところは卒業後東京遊学の許可だった。但し二人とも学資を出して貰える境遇でない。そこ

据っていたと見えて策を弄さない。取られて東京へ行ったのが出世の糸口さ。若しこゝにいたら矢っ張り畳屋をやっ

「尾崎さんだってその後食いつめて東京へ出たから、あれ丈けになったんだぜ」

いるが、祖父さんの話によると全く嘘だ。『東京見物をしておっ走って来る』と実は逃げて来る覚悟だったそう

「僕の方も敢えて人後に落ちない。東京の大学へ六年行っていて到頭卒業しないで帰って来たの

が苦学は絶対に不可能らしい。単に新聞配達をする為めに東京へ行くのなら考えものだぜ」

「東京の尾崎さんは見世物じゃない」

この辺の名所だから、尾崎さんあたりに見て貰えば東京へ響くぜ」

、それが立派な教訓になっている。何うかして東京へ勉強に出たい。これが卓造君目下の全屈託である。苦学を

「しかし東京から見に来ているんでしょう?」

「東京の人達と一緒でした。大滝を検分して貰ったんでしょう?」

「東京から唯来るものかね。旅費と日当と鑑定料を取られる」

大滝に発電所が出来て、角町に会社のビルデングが建つ。東京へ電力を送るんだそうだ。それから田川さんの経歴が詳しく紹介し

と尾崎さんは至って平民的だ。尤も元来食いつめて東京へ逃げたほどの身分である。

「何れ東京へお出掛けでしょう」

「実際綺麗だね、東京のモダン・ガールは」

「東京から買いに来たよ。あの通り角町の郵便局へお上のお達書がつい

その都度これでは困ると急き立てられた心持になって、東京から水力電気の専門家を招聘する。

丁度その頃、東京の尾崎さんが大滝の夢を見た。若い時鮎を釣りに行った

「兄さんは明日尾崎さんと一緒に東京へ立つんで忙しいんだ」

田川の伯父さんも一行に加わって東京へ立つ。卓造君は睦さんと一緒に駅へ詰めかけていた。

田川の惣領睦さんは中学時代からのらくらもので、東京へ修業に行ったが、中途で帰って来た。角町の銀行は一

「時に卓ちゃん、君は来年東京へ行く。それについて僕は成功の秘訣を話したいと思うが、

「卓ちゃん、東京へ行って一番大切なのは天を恐れないことだ。天を恐れちゃ

給え。山中村は無論のこと、○○町や角町から東京へ修業に行ったものは大抵中途半端で帰って来る。失敗率が多いぜ

地方はこの通り何方を向いても山がある。ところが東京へ行くと山が些っとも見えない。実に心細いぜ。初めの中は迚も

んだが、遺伝だから仕方がない。田川家は代々東京へ行って失敗している。僕で三代目だ。卓ちゃん、君は

「維新後東京へ行って邏卒を志願したそうだ。今の巡査だが、当時は

「東京へ修業に行けば出世をするに定っていますよ」

「兎に角、出世の道が開けました。卓造は東京へ修業に出して戴けますよ」

「東京へ行って新聞配達をするとしてもさ」

「事務員は東京から入り込むでしょうな?」