銭形平次捕物控 227 怪盗系図 / 野村胡堂

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地名一覧

箱根

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それだよ――お膝元の江戸へは入らなかったが、箱根から宇津の谷峠をかせぎ場に、大物ばかりを狙った悪者だ。それが今から

宇田川町

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「巴町の御浪人で大橋伝中様、宇田川町の呉服屋で相模屋清兵衛さん、芝口二丁目の棟梁で、喜之助親方――それだけ

「三軒目の宇田川町の呉服屋――相模屋清兵衛のところへ行ったのは戌刻半(九時)

、その間が少しかかり過ぎたようだな。芝口二丁目と宇田川町は眼と鼻の間だ、四つん這いになって行っても、一刻(二時間

「すると、宇田川町から金沢町まで、一刻で帰ったことになるな」

まで取って返して、近江屋の主人半兵衛を殺し、もう一度宇田川町へ引返したとすれば、番頭宇八には下手人になる可能性はあったわけ

半兵衛も、あの男が殺したかも知れない。あの日宇田川町の相模屋を出て、芝口二丁目の棟梁の家へ現われるまで、一刻という

の家を出て、戌刻半(九時)過ぎに宇田川町の相模屋へ行くまで、ざっと一刻の間の足取りがわからなかった筈だ。

八丁堀

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筆頭笹野新三郎の心祝いの小宴に招かれて、たらふく飲んだ八丁堀の帰り、二人は八つ小路を昌平橋へ――、筋違御門を右に

も死物狂いだろう、陸へ上がるとうるさい。このまま真っ直ぐに八丁堀の組屋敷まで漕がせよう」

た。が、それを右から左へ積んで、真っ直ぐに八丁堀の組屋敷に持込もうとは悪者どもも思いつかなかったろう」

「親分落ちついていちゃいけねえ、八丁堀は煮えくり返る騒ぎだ」

「ヘエ、八丁堀が煮えくり返りゃ、築地あたりは煮えこぼれるだろう」

「生き残りの斑組の首領が、八丁堀の組屋敷へ果し状を付けたんだ、――こいつは驚くでしょう、親分」

「八丁堀が煮えくり返って、築地が煮えこぼれて」

で話を続けました。階級制度のうるさい当時でも、八丁堀の旦那衆には、まことに解った人が多かったのです。

して引籠るが、お前は差支えあるめえ。俺の代りに八丁堀から尾張のお屋敷まで付いて行って、よく見張るが宜い」

厳重を極めた、御金蔵に納めるのが本筋ですが、八丁堀の組屋敷からでは道中が長過ぎて口さがない江戸の町民たちに、その物々しい警戒

「八丁堀の組屋敷だよ。今ごろは笹野様に泣きを入れて来ているに違いない

芝浜

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と一刻の間の足取りがわからなかった筈だ。本人は芝浜へ出て風に吹かれていたといっていたが、そんなバカな

浅間

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引きずり上げるように、浅間の家の中へ、行燈を近か近かと持って来ると、お静の

芝浦

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、少し飲み過ぎて、頭痛がしてかなわないから、暫らく芝浦へ出て、仙台様御中屋敷の裏あたりで、御浜御殿を眺めて、海

戸塚

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たらね、本所の石原ですよ。父親の定五郎は昔は戸塚の宿で旅籠屋をして、よく暮したそうですが、身上をいけなくし

本所

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―小僧の定吉の家へも行ってみましたらね、本所の石原ですよ。父親の定五郎は昔は戸塚の宿で旅籠屋をして、

「御免下さい――本所から参りましたが、定吉さんはおりますか」

「八、本所から来た男は、何処へ行ったかお前気がつかなかったか」

「少し気になることがあるんだ、――すると本所の家には、だれが病人の世話をして居るんだ」

「知らない人が本所から来てくれるというのは変じゃないか。それに途中から姿を隠す

いる四つ手を一梃さがして来て、お里を本所の石原まで送るようにいいつけると、自分はそこから引返して真っ直ぐに、金沢町

知れません――あれは宇八どんですよ。皆んな本所へ行くって、御近所の衆もそこそこに帰ると、いきなり裏口から入って来

銭形平次と八五郎は、こんな調子で始めました。本所の石原で、小僧定吉の父親定五郎が殺された翌る日のことです。

ずくで手籠めにするかも知れず、伯父の半兵衛や、本所の定五郎を狙った手が今度は私に何うかしないものでもない。

私に何うかしないものでもない。小僧の定吉は本所の家へ帰ったきりで、初七日が過ぎなきゃ来てくれそうもない

「何んだ、本所の叔母? お前の叔母さんは向柳原じゃないか」

後で聴こう。とも角鳥を逃がしちゃ話にならない、直ぐ本所へ引返そう」

小僧の元吉の口を塞いだ上、お前に頼まれて本所石原の定五郎――あの定吉の父親を殺したが、自分も谷中へおびき寄せられ

寛永寺

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「お山同心に見張りを頼んで来ましたよ。寛永寺の寺内ではないが、どうせお山の見まわりが見つけたんだから」

相生町

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聞いて直ぐわかりました。二つ目の橋の側、相生町の五丁目を裏通りへ入ったところで、路地を距てて左手は、小身の御家人

その晩、相生町の五郎八の家を土地の町役人や下っ引に任せて、明神下の自分の

佐久間

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「佐久間の仁助店も覗きましたが、暗くなるのにまだ帰っていませんよ

江戸

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ばかりで、ポカポカする陽気ですが、桜にはまだ早く、江戸の街もこれから、春の夜の夢に入ろうとする亥刻(十時

旅から旅への暮しもそこでお仕舞いになり、私は江戸に住みついて、何時の間にやら三年も経ってしまいました」

言いました。親方は明石五郎八、旅まわりの田舎芸人で、江戸などで小屋を掛ける人じゃございません」

て、よく暮したそうですが、身上をいけなくして江戸へ出て、数々苦労をした揚句の果てに中気に当り、足腰も立た

「それだよ――お膝元の江戸へは入らなかったが、箱根から宇津の谷峠をかせぎ場に、大物ばかりを狙っ

二年前、宇津の谷峠で尾張様の御用金――名古屋から江戸へ持って来る一万二千両の金を、馬子と宰領のお武家二人を斬って

「江戸で起ったことと違って、宇津の谷峠のどろぼうでは、ツイ力瘤も抜けて

、多分姿を変えて、酒か米の荷に紛れて江戸へ入ったことだろう」

「その時分、江戸の町方へもお触れがまわりましたね。斑組六人男の巣を

「馬鹿だなア、江戸は広いやな。一々湯好きと湯嫌いを調べ上げられるものか。それに大店

中味だけ他の物と紛れるように、小さい荷物にして江戸へでも送り込んだことだろう」

たのだろう。四人腹を合せて隠れていると、江戸の中じゃ手繰り難いが、四人の間にヒビが入れば占めたものだ

家まで飛びました。もう亥刻(十時)過ぎ、江戸の街も静まり返って、乱れる自分達の足音だけが、物々しい響きを、町から

は、悠然と青空を劈いて、五重の塔が聳え建つ風物は、江戸の町の雑沓から、僅かに数丁の距りとも思えぬ物淋しさがあり

上下で一両もあれば贅沢過ぎたくらいで、宇八が江戸に踏み留って網の目のような役人の追及を潜って、堂宮に泊ってい

それから一と月あまり、江戸はすっかり初夏になりきって、町懐ろを彩どる稲荷の祠も、若々しい青葉に

江戸の年寄り達はそういいました。平次に対する、抜くべからざる信頼感です。

ところで、自惚れちゃいけない。憚りながら斑組の首領、江戸の岡っ引が怖いわけじゃない。唯うるさい思いをせずに、自分の仕事を

「宇津の谷峠でせしめた一万二千両の小判、江戸へ持込んだところまではわかっている――その通り二千両づつ納めた金箱が

近江屋の半兵衛と、石原の定五郎だけ――二人は俺が江戸へ帰るのを待って、一々俺にいう筈のが、一と足違いで

八五郎は馬のように飛びました。宵明りの江戸の町を、十手を腰に挾んだのが六人、奔馬の如く駆けるの

「その五郎八は、江戸にいるのか」

、三年に一度、二年に一度は、生れ故郷の江戸に還って来て、場末の空地、堂宮の境内などに小屋を掛け、その

、堂宮の境内などに小屋を掛け、その適当な芸を江戸の客に見せておりました。

もとより格も身分も低い旅まわりの芸人ですが、時偶江戸一番の盛り場、東両国に小屋を借りて、一と月でも二た

一座が有卦に入った時で、今年は不思議に花時から江戸に踏み留まり、東両国で蓋をあけて、とも角も江戸の人気を繋いでおり

から江戸に踏み留まり、東両国で蓋をあけて、とも角も江戸の人気を繋いでおりました。

中年者で、一座には腕ッこきの達者がそろい、江戸のお客には、少し田舎臭い芸ではあったにしても、二た

なり、大事な手掛りまで手放してしまったと言われちゃ、江戸の御用聞一統の恥ばかりじゃねえ、引いては公儀の名折れ――いやそんな

六月の陽がサンサンと江戸のいらかに降る中を、中ノ橋を越した一万両の行列は、軽子

ですが、八丁堀の組屋敷からでは道中が長過ぎて口さがない江戸の町民たちに、その物々しい警戒ぶりを冷やかされ、落首や川柳になって、

大橋要人は唸ります。実際江戸の年中行事は、今日のように出鱈目なものではなく、三月過ぎ五

百姓娘になりきったお銀は、望まれて江戸へ嫁入りしましたが、その時もらった支度金の百両は里親がそっくり取り込ん

「ほかではございません――私が江戸で縁づいたのは」

両を奪い盗ったのを打ち止めに、綺麗に足を洗って江戸に入り、銘々離れ離れになって堅気の仕事を見つけ、ほとぼりのさめるのを待っ

ている私は、自分の命を助けるためには、当時江戸で飛ぶ鳥も落す銭形の親分さんの懐中に飛び込むよりほかに、良い思案が

「今は江戸にはおりません。でも、近いうちには戻って来て、盗みためた二万

は、宇津の谷峠で盗った、尾州の御用金一万二千両を、江戸へ運び込んで間もなく、近江屋半兵衛に騙し討ちにされ、それから小頭の半兵衛

ば、京大阪へも持って行けたことでしょう。住みにくい江戸に踏み止まって罪の上に罪を重ねたのは、他所ながら親分を見て

気がつくと八方に起る人声。半鐘の響き、江戸の町は夜半の大火にかき立てられて、一としきり無気味な動揺を続けるの

佐久間町

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「佐久間町だよ。仁助店の元吉って訪ねて来ねえ」

たが、暗くなるのにまだ帰っていませんよ。佐久間町の路地の奥で、雀の巣のような家ですがね、母親一人に

は吉兄哥に頼んで、お前はこの小僧の死骸を、佐久間町の親許に送り届けてくれ」

「ヘエ、ヘエ、私は佐久間町の家主仁助でございます。これは元吉の姉のお雪で」

、提灯の黄色い灯りにわびしく照らされながら、夜更けの街を佐久間町にたどるのでした。

「佐久間町の仁助店まで、死骸を運び込んだら、可哀想でしたよ。母親は貧乏疲れの

八五郎が飛び出した後、平次はフト思い立って、佐久間町の仁助店に、殺された樽拾いの小僧、元吉の家を覗いて見る

―ところで、この財布に二十両の小判を入れて、佐久間町の樽拾いの小僧の家の窓から投り込んだ者があるんだ」

定吉に宇八を誘い出させ、自分は宵のうちに、佐久間町の樽拾いの小僧の家へ行って窓から財布などを投り込んだ、

は、新らしい穴を二つまで見つけました。一つは佐久間町の仁助店に、鼠の巣のように暮している、樽拾いの小僧―

「佐久間町のお雪の家へ、変なものを投り込んだ奴がありますよ

の腑甲斐なさを責める気にもなれず、そのまま自分で佐久間町のお雪の家へ行きました。

平次と八五郎は、佐久間町のお雪の家を出ると、足は自然明神様の方に向きました

「だが、佐久間町のお雪のところに投り込んだ手紙の筆跡は、前のも後の

――それに近頃あの八五郎が夢中になっている、佐久間町の樽拾いの小僧の姉のお雪などはどうだ」

はぐっと若くて可愛らしい、あの樽拾いの元吉の姉、佐久間町のお雪ではありませんか。

「ちょいと佐久間町のお母さんのところへ行って来ましょうか」

八五郎はたまり兼ねて起ち上がりました。そのころ佐久間町に住んでいたお静の母親の家まで、ガラッ八の足で飛べば、

「親分、姐さんは佐久間町のお母さんのところへも行っちゃいませんよ」

府中

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「三年前府中で興行している時、土地の顔役といざこざが出来、私の命も危ない

名古屋

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から丁度二年前、宇津の谷峠で尾張様の御用金――名古屋から江戸へ持って来る一万二千両の金を、馬子と宰領のお武家二人を

湯島

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それは滅多なことでは驚いたことのない、湯島の吉という中年者の下っ引でした。

湯島の吉もさすがに声を呑みます。

湯島の吉は飛び出しました。下手人の足跡らしいものをかぎつけると、それを手繰らず

移りました。八五郎を飛ばして近所の下っ引――湯島の吉を呼び出させ、それからそれへと檄を飛ばして、半刻経たぬうち

、惜し気もなく大雨の中へ出て来ました。湯島の吉に金太、巳之助、それに平次の着物を着た若松。

八五郎と湯島の吉が、庇合いの滝のような雨にたたかれながら裏へ廻るの

八五郎は事ごとに驚かされるばかり、湯島の吉や金太、巳之吉の輩は、口を開いて聴いております。

愛宕山

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「愛宕山の男坂の、六十番目の段々の下なんかどうです」

「お前愛宕山へ行って、六十番目の段々の下を掘って見ろ。請合いみみずが二、三匹

「あっしは、愛宕山の外に、六十も段々のある場所はないと思うが。ね、親分」

(おやじの口の中)というのは何んだ。愛宕山にそんなのがあるかえ」

明石

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「明石の五郎八はくさいが、あれでもない。酉刻(六時)まで両国の小屋

三箇所へ隠したが、まだ安心が出来ないので、明石の五郎八も殺してしまった」

昌平橋

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て、たらふく飲んだ八丁堀の帰り、二人は八つ小路を昌平橋へ――、筋違御門を右に見て歩いておりました。

ているのを見ると、一番先にそんな事を考えて昌平橋の方へ行ったのでしょう。それに――」

小柳町の駄菓子屋に首を突っ込んでいるのを見つけて、昌平橋の自身番に預けてありまさァ、うんと脅かしたら、ワンワン泣き出しゃがって手の

最初から話してみようか。半兵衛が殺されたあの晩、昌平橋で、俺とお前に逢った時は、お栄もさぞ吃驚したことだろうよ

「そこで易者にきいて見な、昌平橋の袂にいるよ。商売々々でそんなことはよく知ってるだろう、何を

、路地の外へ、そして金沢町の通りへ出て、昌平橋の方へ行ったのです。

増上寺

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申刻(四時)丁度で――あつらえたように、増上寺の鐘が鳴ったそうですから、間違いはありません、――其処では

谷中

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四人の町方の下っ引、それに近所の寺男や、谷中に近い店から飛び出して来た弥次馬の一隊でした。

もう一人は、谷中の天王寺の側にある、小さい茶店の女で、これは二十三の抜群のきりょう

近江屋の番頭の宇八が、谷中の森で殺された後、何彼とそこに用事のある八五郎が、茶店

「谷中の店はどうなるんだ」

天王寺

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「あれはいろは茶屋じゃありませんよ。天王寺の側でしきみや線香を売っている家ですよ」

扉は打ち壊さなきゃ外へ出られないよ。扉を壊せば天王寺の役僧にしかられるだろう。フ、フ、フ、銭形の親分でも、寺社

大江山

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「急ぐな八。大江山が近いとわかれば、あとは相手にさとられないように、万に一つ

「路地の中の、大江山はどうなるんで?」

駿府

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てますよ。二、三年前でしたね、小田原から駿府へかけて宿々を荒した、六人組の大どろぼう」

両国

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思いやられまさ、――あの日は昼から親の家へ帰って、両国の見世物一つ見るんじゃなし、叔母のお里を骨休みに出してやって、父親の

ガラッ八は、一応調べが済むと、定吉の家を引揚げて、両国の方へ歩いておりました。

、恐ろしい早業でお栄を縛った、――あの時の縄目は、両国の見世物で、縄抜けの時やる早縄だ。見てくれだけは厳重だが、身体を一つ

「東両国で小屋を掛けていますよ」

下っ引の一人、両国を縄張りにしている寅吉というのが引取りました。

た時で、今年は不思議に花時から江戸に踏み留まり、東両国で蓋をあけて、とも角も江戸の人気を繋いでおりました。

低い旅まわりの芸人ですが、時偶江戸一番の盛り場、東両国に小屋を借りて、一と月でも二た月でも興行するのは、明石一座が有卦に入

と両国の寅から、これだけのことを聴きながら、宵の東両国に向いました。

平次はみちみち八五郎と両国の寅から、これだけのことを聴きながら、宵の東両国に向いました。

両国の寅は、物馴れた静かさで、相手を驚かさないように声を掛けました。

「ところで、きょう両国の小屋が閉ねたのは何刻ごろだ」

「今度は両国の小屋だ」

二人は足を急がせました。東両国の明石一座の軽業小屋に着いたのは、もう戌刻(八時)過ぎだったでしょう

両国の小屋は半永久的に建てたもので、それはひと通り整ってはおりましたが、

両国を引揚げて、神田明神下の平次の家へ、二人はあなの中に引入れられるよう

が捜していたまだら組とやらのかしらでしょう、場所は両国に近く船の艪の音がよく聞えます。お願い申します。

「行って見ましょうか親分。両国の西東をひとわたり見て歩いたら見当ぐらいはつくかも知れません」

事をしているよ。第一もう亥刻(十時)だろう、今から両国へ飛んで行ったところで、何が見えるものか」

異もたてずに、近江屋を見捨てました。行く先は東西の両国、水に近くて、人間一人を楽々と隠せる家というと、この辺にはそんな家は

のような黒い顔、たくましい眼鼻、それは紛れもなく、両国の軽業明石五郎八の小屋の木戸番をしている、半次という男だったのです。

の五郎八はくさいが、あれでもない。酉刻(六時)まで両国の小屋にいて、それから一と風呂浴びて一杯やっているところを、この眼で

「あの男なら出来るよ。両国の小屋がはねてからここに飛んで来れば間に合ったはずだ。それにあの男な

う明るい日ごろの平次に還っておりました。明神下から両国まで飛ぶと、そこから早船を仕立てさせて、いっ気に綾瀬へ――。

うに扉を閉ざし、土を直して、小判と人を載せた船は、両国へ下ります。

曲者はその辺にマゴマゴしちゃいない。おれの見当では両国か谷中か、いずれにしても巣は遠いよ」

「たった今、両国か、谷中――と親分はいったでしょう」

は付く筈はない。馬糞墨で乾きが遅いにしてもこいつは両国や谷中から持って来た手紙じゃない」

「俺たちはやはり両国へ行くのだ。いいか、お前は湯島の吉を呼び出して、町内へ筒抜けに聴える

吉の輩を狩り出し、富士の巻狩りほどの騒ぎをしながら両国の方へ行くのを、馬鹿々々しくも見張っていることでしょう。

のまま出て来て、たいして急ぐ様子もなく、雷雨の中を両国の方へ、柳原の闇を辿ります。

から年恰好までよく似た下駄屋の若松を、自分の代りに両国へやって、相手の悪者をすっかり油断させた平次は、若松の家の裏口から、

おります。そこへ暫らくお静を預けて、平次はそのまま両国へ。

「なアに、おれの装束は、若松が着込んで両国で待っているよ。心配するな」

そこから両国まで、平次は逸散に駆けつけました。相手の構えの立ち直らぬうちに打つべ

が五重の塔でおれたちにからかっているころ、五郎八は両国の小屋にいるとばかり思い込んでいたのだ」

刻(二時)過ぎとかいったな、五郎八の女房のお六が、両国の小屋の裏から出て、一人で帰ったと路地の前の呑み屋でお前は聴いて来た

人数のうちだ――それから尾州蔵屋敷の庭男の与吉も、両国の軽業小屋の木戸番半次も――」

金沢

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ありませんよ。この節あっしと親しくなったのは、金沢町の近江屋半兵衛の姪お栄――」

ツイ今しがたまで、親分の平次とうわさをしていた、金沢町の近江屋の姪お栄という、近ごろ明神下をカッと明るくしている評判

平次は初めて口をききました。金沢町の路地を入って、突き当りのしもたや、近江屋半兵衛の家は、金貸しらしく

近江屋半兵衛殺しがあった翌る日の夕景、平次は金沢町の現場で一日調べ抜いて、ツイ眼と鼻の間の、自分の

これは大口だから、利息を三両受取って、真っ直ぐに金沢町へ帰ったということです」

「すると、宇田川町から金沢町まで、一刻で帰ったことになるな」

はそれで終りました。芝口二丁目の喜之助の家から、金沢町まで取って返して、近江屋の主人半兵衛を殺し、もう一度宇田川町へ引返し

「八、お前は金沢町の近江屋へ行ってみろ、夕方からだれとだれが外へ出たか

その晩平次と八五郎は、金沢町の近江屋に行っておりました。明日は殺された半兵衛の初七

「おれはもう一度金沢町へ引返して見るから、お前は先へ行くが宜い、――もっとも女

送るようにいいつけると、自分はそこから引返して真っ直ぐに、金沢町の近江屋まで、真に追っ立てられるように飛んだのです。

「すると金沢町へ知らせに来たのは?」

「金沢町の近江屋のお栄です」

ありませんよ。近江屋の小僧の定吉が、昨夜始めて金沢町へ帰って来ると、その留守中にあの叔母さんのお里とか

「私でした。昨夜金沢町で泊って、忘れものがあったので、けさお栄さんにそういって

「昨夜、お前が金沢町の近江屋で泊ったのはたしかだろうな」

それから両国橋を二度渡り直して、昌平橋から金沢町へ入るまで頑固な沈黙は続きました。八五郎もそんな時は心得

は少しまわって見るところがある。お前は一と足先に金沢町へ帰ってもう一度近江屋を見張っていてくれ」

八五郎は平次に別れて、緊張した心持で金沢町の近江屋に帰って来ました。この家へ、だれが最初に来る

行き、そのお栄のもどって来るのを見張るために、金沢町へ取って返したのです。まさかこの家の中に、当のお栄

行って窓から財布などを投り込んだ、――そして金沢町の家へ帰って、お前が変な顔をするのを、面白そう

「ところで、金沢町の近江屋半兵衛を知っているだろうな」

「何んだ、お前たちは金沢町の近江屋を見張っていたのじゃないか」

橋がかりから出るような足取りで、路地の外へ、そして金沢町の通りへ出て、昌平橋の方へ行ったのです。

をさして路地を出ると、真っ直ぐに行ったのは、金沢町の下っ引――下駄屋を内職にしている若松の家でした

銭形平次も驚きました。それは曽て金沢町の近江屋の番頭で、後に人手に掛って死んだ宇八という

「尾州の御用金一万二千両は、最初金沢町の近江屋に隠して置いたが、仲間割れが始って谷中の五重の塔に移し

仙台

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「芝口二丁目仙台屋敷の側の棟梁喜之助のところへ行ったのは申刻(四時)

、頭痛がしてかなわないから、暫らく芝浦へ出て、仙台様御中屋敷の裏あたりで、御浜御殿を眺めて、海の風に吹か

長崎

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疲れを知らぬ八五郎は、直ぐ様長崎へでも飛んで行きそうです。

水戸

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そんなことをいううちに、船は三囲から竹屋の渡し、水戸様御下屋敷前まで来ておりました。

「おっと、この辺でよかろう。水戸様の御下屋敷は除けて、土手の桜を算えるんだ。一本

小判の箱は、ここから桜を算えて十本、水戸様の方へもどるのだよ」

上野

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。毎晩飯が済むと仕事の残りを持って行って、上野の亥刻が鳴るまで有難いお話を聴かされるんで、大師様の話

山下で昼の支度をして、上野の山へ登ったのは未刻半(三時)ごろ。

谷中天王寺を取巻いた私娼窟は、上野から谷中へかけての夥しい僧侶の隠れ遊び場所で、これをいろはと俗称し

それに逆うのが悪いと思ったか、直ぐにトボトボと上野の森の中に影を隠してしまいました。

「先刻撞いたのは、上野の亥刻(十時)かな」

神田

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「親分、神田まで一と飛びだ」

人の下っ引だけを連れて、夕暗の街を、神田明神下まで逸散に飛びます。

両国を引揚げて、神田明神下の平次の家へ、二人はあなの中に引入れられるような滅入っ

それは平次の子分どもで、銘々神田の縄張りを預かる下っ引だったのです。

堀切

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綾瀬川を少し上ると関屋の里から、花菖蒲の名所の堀切村になります。

うちに、平次と八五郎と、十人の下っ引は、堀切の花菖蒲園の裏、綾瀬川のほとりに立って、あちこちを物色して

向島

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「桜の二十六の二――向島の桜の数を算えて二十六本目の下を掘るんでしょう」

ああ、親分、一と足遅れましたよ。彼奴らも向島と気がついて、二十六本目の桜の下を掘ってるじゃありませ

市ヶ谷

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一万両の大金は、市ヶ谷の尾州上屋敷に持込んで、厳重の上にも厳重を極めた、御金蔵

市ヶ谷御上屋敷からは今日の成功を褒めて、物凄まじくも豪勢な肴と、酒

「市ヶ谷の御上屋敷から、お喜びの御馳走でございます。お過しなさいませよ」

しなかったのさ。組屋敷の門内で仕事をしなきゃ、市ヶ谷の尾州様上屋敷へ荷がついてからだろう」

「市ヶ谷の上屋敷じゃありません。一万両は首尾よく築地の蔵屋敷に送り込まれまし

「それから酒盛りが始まって、市ヶ谷御上屋敷から繰り込んだお女中と、だれが呼んだか知れねえ町芸者と

両を町方にお任せ下されば、何んの苦もなく市ヶ谷御上屋敷へお届けするはずでございました」

酒も肴も後から後からと出るのじゃ。訊けば市ヶ谷の御上屋敷から、一万両を奪い還した祝いに、山澄淡路守様格別の

両国橋

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両国橋の上で、ハタと顔を合せたのは八五郎です。

平次は両国橋から引返して、もとの石原へ――、利助の家は小僧の定吉の

それから両国橋を二度渡り直して、昌平橋から金沢町へ入るまで頑固な沈黙は続き

平次は面白そうに、両国橋の上をウロウロする二、三人の影を指さしました。綾瀬川を

集めるんだ、――夜討ちでも掛けるように繰り出して、両国橋のあたりで待っているがいい」

豪雨の中の両国橋の上、雨明りの中にわずかに動く人影はたった一つ、そのヒョロ

綾瀬川

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上をウロウロする二、三人の影を指さしました。綾瀬川を少し上ると関屋の里から、花菖蒲の名所の堀切村になります。

と、十人の下っ引は、堀切の花菖蒲園の裏、綾瀬川のほとりに立って、あちこちを物色しておりました。

隅田川

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「船まで運ぶが宜い。今度は隅田川を下るのだ」

は、お前がツイ傍の花屋で見張っていた。一度隅田川へ持ち出した時は、細工が過ぎて、直ぐ俺に捜し出されてしまった

神田川

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前に綾瀬でも、堅川でもおれの家の前の神田川へでも持って行けるよ」

堅川

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「ここから船で運べば、夜明け前に綾瀬でも、堅川でもおれの家の前の神田川へでも持って行けるよ」