秋の駕籠 / 山本周五郎
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「箱根までゆくんだ」中次がもつれる舌で答えた、「通し駕籠で箱根までよ
「箱根がどうしたって」
は首を振った、「通し駕籠で五両、……箱根まで、……ういっ」
さのためにそれどころではなかったが、そのなかで箱根とか、五両とか、通し駕籠とかいう言葉だけは聞きとることができ
五時、二人は弾正橋でいそという客とおちあい、箱根へ向って出発した。気分は重かったし、大森で早めの昼食をする
たがそっくりやられましたよ、ええ、だからこんどは箱根まで頼みたいと思いましてね」
その人を江戸から通しで乗せたんですが、へえ、箱根まで通し駕籠で、駄賃は五両という」
「だっておめえ十両だぜ、箱根までいって五両、それが倍になったんだ、盗めば首の飛ぶ
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の匂いや物音や、子供たちの騒いでいる路次をぬけ、八丁堀の河岸っぷちへ出ると、そこだけ明るい水面から、冷えた夕風が吹きあげて
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ように云った、「この客はあっし共の知合で、江戸から箱根へおいでになる途中」
六助が狼狽して云った、「あっし共はその人を江戸から通しで乗せたんですが、へえ、箱根まで通し駕籠で、駄賃は五
「江戸の人足にも似合わない」役人は皮肉に微笑した、「どんなわけがある
一文も貰っちゃあいねえ、此処まで手弁当で来て、江戸へ帰る小遣にも困ってるんですがね」
た。正金で四百五十両、そのままずらかることもできた。江戸からこの大磯まで手弁当、帰りの銭にも困っているのに、「このまま
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その日は神奈川泊りにした。第一日だから、ということだったが、宿へ
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もいまいからね」いそという客は云った、「草津へいったときには自分が持っていてさ、二百両ばかりだったが
ばかりでなく、浮かない気分からも解放してくれた。草津のときは二百両も盗まれたという、またこれだけの金をむぞうさ
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金助は四十五であった。彼はもと深川で魚屋をしていたが、お梅が八つになったとき女房
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か」客は不審そうに反問した、「私は江戸日本橋槇町で、京呉服の店を営んでいる山城屋五十平という者で
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かれらは京橋の北詰で辻待ちをした。雨の日でもそこへゆけば、