東京

父も母も真剣だった。今まで押され気味の父が東京の有力者と共同で村にモスリンの会社を起した。取締役になって

「緒方は東京を控えている。交際が好い。格式が違う」

。主人が職人と同じ服装をして倉へ出入りする。東京へ行って金を使う父とはプラスとマイナスだ。僕は少し心配に

「君は東京へ行く気か？」

がなくなる。僕の親父は君のお父さんのことを今に東京の人に瞞されて財産を皆取られてしまうから気の毒なものだと

格式がない。君のところは親類が好い。その上に東京を控えているんだから」

「今に東京に皆取られてしまうんだよ」

話し込むことが多かった。その中に、東金君の姉さんが東京の資産家の令息に嫁いだ。お父さんが好男子だから、娘達は皆綺麗

しかし僕達はお互に理解があるから平気だった。東京では滅多に顔を合せないが、休暇に帰ると、行ったり来たり

「いや、東京の義兄の親類さ」

「姉さんは綺麗だから、東京へ行っても大威張りだろう」

横に振る。村一番の競争は東金家が格式を東京に求めて以来、一層尖鋭化していた。

その折から、東金では又郁子さんを東京へ片付けるという噂が伝わって来た。僕としては大恐慌だった

「矢っ張り東京だ。姉が世話をしてくれた。義兄の従兄で今度は帝大出身

「皆東京へやってしまうんだね」

定めた。妹は皆東京へやる。その代り嫁は必ず東京から貰う」

僕は親父と相談して方針を定めた。妹は皆東京へやる。その代り嫁は必ず東京から貰う」

「僕は村にいたくない。東京だよ。君、生活は」

「東京ですってね？」

「うむ。思い切って説諭したら、口答えをするんだ。東京の女は口が達者だ。僕は遣り込められて、口惜し紛れについ肩