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外の廊下に怠らず見張り番を勤めていた書生の青山は、例のドアが内部からコツコツノックされているのに気づいた。

て廊下へ躍り出し、まるで稲妻の様な素早さで、青山の傍をすり抜け、玄関の方へ走り出した。

外国人向きの日本遊覧案内だ。画面には富士山がある。厳島神社の鳥居がある。振袖娘の舞姿がある。鎌倉の大仏様がある。

ていた。外国人向きの日本遊覧案内だ。画面には富士山がある。厳島神社の鳥居がある。振袖娘の舞姿がある。鎌倉の大仏様

警視庁へ長距離電話をかけて来たのだ。電話は横浜の少し向うの神奈川県Ｏ町からであった。

雲山氏は二日ばかり前、所用あって関西に旅行し、明日は帰宅する予定になっていた。丁度その夜、妙

ある。厳島神社の鳥居がある。振袖娘の舞姿がある。鎌倉の大仏様がある。

仏が選ばれたのは、東京から近いばかりでなく、鎌倉の大仏などの様に礼拝所として胎内を開放したものでなく、

無論興行主の当て込みである）、そして、出品物では三重県の真珠王が自慢の価格二十万円を唱える国産大真珠であった。しかも、

「エ、何ですって？　法隆寺？　ではその国宝というのは……」

に容易ならん事件だが……それにしても、法隆寺では、この貴重な国宝がなくなっているのを、今まで気づかなかったのです

「ところが、法隆寺の金堂には、別に異状はないのです。玉虫厨子はそこにちゃんとある

「そうです。偽物です。何ヶ月かの間、法隆寺には巧みに出来た偽の玉虫厨子が安置してあったのです」

嗅ぎ出していたに相違ありません。でなければ、遠い法隆寺の偽物に署名なんかしている暇はありませんからね」

それが君には耐えられなかったのだ。君が度々ロンドンの千秋さんに手紙を出していることを、僕はちゃんと知っているのだ

分かの後、ルパンの自動車はやや速力をゆるめて、東京市内の淋しい町を縫って走っていた。

て、上野公園に十年来の大博覧会が開かれた。東京府市主催の産業博覧会であったが、その規模は全国的のもので、諸外国出品

その年、四月一日から五ヶ月に亙って、上野公園に十年来の大博覧会が開かれた。東京府市主催の産業博覧会

その翌日、日比谷公園の大車道に、一台の自動車が捨ててあった。番号によって

どこか当てがあるのかと思っていると、呑気らしく日比谷公園に入った。そして、何の為かは分らぬが、花壇や運動場など

一時間も引っぱり廻されて、やっと日比谷公園と縁が切れた。今度こそ隠れ家かと意気込んでついて行くと、

白粉の化物みたいな大男、屋上庭園の仔細らしい旗信号、日比谷公園の追っ駈けっこ、そしてトランクの中には国宝どころか、畜生め、この

彼はこの二ヶ月の間、要務の余暇には、京都奈良の博物館、神社仏閣を巡覧して、東洋美術の賞美に日も足らぬ

」明智は腹立たしげに叫んだ。「現に僕は今、奈良の法隆寺事務所へ電話をかけて、それを確めたのだ」

波越氏はびっくりして尋ねた。丘の中央に奈良の大仏よりも大きいので有名な、Ｏ町名物のコンクリートの大仏様が

奈良の大仏よりも大きいというコンクリート仏が、真二に裂けて、火山の様

。彼はこの二ヶ月の間、要務の余暇には、京都奈良の博物館、神社仏閣を巡覧して、東洋美術の賞美に日も足ら

「巴里からです」

「フン、巴里の何人から？」

「お聞き及びでしょうと存じますが、元巴里警視庁刑事部長のエベール君からです」

、巴里郊外に引退していますが、僕は、先年巴里へ行きました時、同君を訪ねて、一日話し込んだことがあります

「今では職を退いて、巴里郊外に引退していますが、僕は、先年巴里へ行きました時

て、日本皇帝陛下に謁見せしめたとあっては、巴里政界に大動揺を来すは勿論、由々しき国際問題です。一通の電報に

で一度死を伝えられた人物です。そして、彼が巴里の政界でメキメキと売出して来たのは、大戦の後でした。ここ

あとかたもなく消え去ってしまった。この大奇怪事に当時の巴里警視庁はひどく悩まされたものだが、それがやっぱり二重の部屋の

た。そればかりではない。いやに下手なフランス語だ。巴里っ子のＫが、こんな変な訛りを出す筈がない。

を刺戟した。随って、この新時代の幽霊は、東京市民の間に、非常な人気を博したのである。

なことだ。兎も角、一時はこの時代錯誤な幽霊話が、東京市民からあらゆる話題を奪ってしまった。幽霊話とは云い条、少くとも

幽霊男は、一箇の大胆無謀なる犯罪者として、東京市民の前に現われたのだ。しかも、犯罪の場所、目的物、犯罪手段

て、上野公園に十年来の大博覧会が開かれた。東京府市主催の産業博覧会であったが、その規模は全国的のもので、

を発行する騒ぎである。従って、怪賊の噂は東京全市に拡がり、さらぬも黄金仮面の怪談におびえていた市民は、

もある。恐らく警察初まって以来の大椿事だ。場所が東京の真中だけに、先年の鬼熊事件の比でない。商売熱心のある新聞社

だが、少くも東京市民は、その記事を、単なる興味を以て読過する訳には行かなかっ

が、その場所は、何という出没自在、意外にも東京から遠く離れた日光山中の、鷲尾侯爵家の宏壮な別邸内であった

この東京市民の恐怖は、当っていたし、又当っていなかった。と

鷲尾侯は北国大藩の大名華族、本邸は東京にあるのだけれど、当主正俊氏は日光山中Ｃ湖畔の別邸を好ん

、今日、父侯爵の古美術蒐集品を観賞する為に、東京から遙々自動車を飛ばして、御出で遊ばすという、Ｆ国大使ルージェール伯爵様の

だ。裏門にも同じ人数、その外邸内には、態々東京の警視庁から来て下すった波越警部とかいうお方を初め、十人

の挨拶を残し、例の紋章入り大型自動車を駆って、東京へと引上げて行った。

、鳴物入りで書き立てたのは云うまでもない。随って、東京は勿論、日本全国の老若男女が、嘗つて聞いたこともない怪賊の噂

、自動車の中から、いくら人通りが少いといっても、東京の真中の電車通りで、一体全体何を撃つ積りなのか。

やっと思違いでないことが判明した。ルパンは今この東京にいるのだ」

ぬ人はあるまい。その大盗賊王ルパンが、日本の東京に現われたというのだ。明智は気が違ったのではないか

ということだ。世界の侠盗、アルセーヌ・ルパンが、この東京に、この大使邸に、この黒天鵞絨の部屋にいると云うのだ。

しかも一方東京市中の子供達の間には、皮肉にも、奇妙な遊戯が流行し

雲山氏は、人も知る東京美術学校名誉教授、我国彫刻界の大元老だ。夫人は数年前に

逮捕の網の目が、蟻の這出る隙もなく張りめぐらされた。東京市内は申すに及ばず、殆ど全国の警察署にルージェール伯の人相書が廻った

日は丁度フランス飛行家シャプラン氏の世界一周機が、東京の上空に飛来する当日であった。

東京市民は、この前人未到の壮挙を迎えて、湧き立っていた。ビルディングという

東京市民で波越鬼警部の名を知らぬものはない。ボーイは名刺を見る

Ｏ町のコンクリート仏が選ばれたのは、東京から近いばかりでなく、鎌倉の大仏などの様に礼拝所として胎内

もう行手に品川の町が見えていた、東京市中へ入りさえすれば、何とか警察自動車をまくことが出来るだろう

分かの後、ルパンの自動車はやや速力をゆるめて、東京市内の淋しい町を縫って走っていた。

せられて、そこの家に休息していると、やがて東京から、何台も何台も自動車が駈けつけて来た。その中に警視

ある若い娘さんは、銀座のショウウインドウの前で、その男を見たと云った。真鍮の手すりに

と思って跡をつけた所、その西洋人は自動車で銀座へ出て、今カフェ・ディックへ這入った所だ。表に見張りをし

彼はカフェを出ると、車も拾わず、ブラブラと銀座通りへ歩いて行く。

白き巨人は、白いステッキを打振り打振り銀座の電車道を横切ってそこの大百貨店に入って行く。

は、地方新聞に至るまで、全国的に、すばらしい大見出しで、上野博覧会に於ける前代未聞の大活劇を、詳細に報道した。少々ボンヤリし

又ある時は、上野の帝室博物館で、場内の掃除女が気絶した騒ぎさえ持ち上った。閉館

主なきモーターボートは、漁船の船尾につながれた。それを曳舟にして、元来た方角へフルスピードだ。警察署長を初め誰も名案

同時に起る明智の叫び声。ハッと振向く人々の目に、今まで曳舟にしてあったモーターボートが、非常な速度で、彼等の舟を離れ

夕方であったが、明智の部屋借りをしている、お茶の水の開化アパートの一室へ、妙な客が訪ねて来た。

、明智は早速外出の支度をととのえ、老執事と共に麹町の大鳥家へと向った。

麹町区Ｙ町のＦ国大使館附近には、午後になると早くも、十

その夜、麹町区Ｍ町にある、川村雲山氏の邸宅には、同氏の一人娘絹枝さん

五分前、一台のありふれた型の円タク自動車が、水道橋の方から、開化アパート前の電車通りを、規則一杯のフル・スピードで

たばかりで、電車も自動車も見えなかったが、そこへ水道橋の方角から、一台の円タクらしい自動車が、非常な速力で走って来

もう行手に品川の町が見えていた、東京市中へ入りさえすれば、何と