モスクワ

で、五人の男女がカンバス椅子にかけていた。モスクワから一日おくれに到着する「イズヴェスチャ」が老教授の膝の上にあった。

「モスクワへでも来りゃいいのに」

いままで知らなかった感じがナースチャの心に生じた。モスクワへ、自分でも行けるのであろうか。原っぱへ出て、夏空の下の

「お前さん、本当にモスクワへ出る気はないかい」

モスクワでは職業組合に入る女中が多くなった。職業組合員の女中は、まるで役人

てごらん！　女中がつれて帰れるらしいのです。いまのモスクワで、身許のはっきりした田舎出の女中は、人造絹糸でない絹ものと

「なぜさ！　モスクワは寒いよ、ホラ！」

ついて眼をつぶっている。電車は午前九時すぎのモスクワを行くのだ。ナースチャは朝日のあたる窓に向って、顔をしかめながら外

「いい娘だから、もう一度しっかり見ておいで。モスクワはソフィヤ村じゃないんだからね、三分間扉を開けっ放しにしておい

。アンナ・リヴォーヴナとリザ・セミョンノヴナがとり交した契約書には、モスクワの借室がたいていそうであるように台所は利用せぬことになっている

十二月になった。日が短くなって、モスクワには毎日雪が降った。

。ナースチャを苦しめるのは、この森の樹より人間の多いモスクワで自分が、まるっきりの独りぼっちだという事実であった。

モスクワだから、それはあり得た。ナースチャがたまに夜映画から帰ると、アルバートの

と云った。モスクワで一番盗難の多い季節なのであった。