逃げたい心 / 坂口安吾

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地名一覧

奥州

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ふ者がない。そのくせ奈良朝の頃には京と奥州を結ぶ道筋に当つてゐたところで、大伴家持が住んだと伝へられる土地

有明

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そのほかに浅間温泉とか、アルプス山中に白骨、中房、有明なぞがないでもないが、これもやがて近づいた登山季節をひかへて、

上林

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いへば、長野から近いところに、湯田中、渋、発哺、上林、地獄谷、熊の湯なぞのひとかたまりの温泉地帯があるのだが、ここは最近相当

善光寺

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蒲原氏は次第にそわそわしはじめて、「とにかく、あの、善光寺へ。善光寺へ……」と誰に向つて言ふともなく、うろ/\

呟いてゐたが、「この道のまつすぐ突当るところが善光寺ですよ」といふ栗谷川浩平の言葉をきくと、もはやほんとに腰を浮かして

とりあへず善光寺裏へまはつて、桜枝町の薄汚い古道具屋をのぞいてみたが、浩平がひそか

長野

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世間話に笑ひ興じてゐたのだつた。そこへ長野警察署から知らせがきたのだ。

「長野は――。ああ、長野。長野は貴方、栗谷川さん……」

「長野は――。ああ、長野。長野は貴方、栗谷川さん……」

「長野は――。ああ、長野。長野は貴方、栗谷川さん……」

「長野は貴方、貴方が買つてきた素晴らしいゲテ物の、びん、びん……

う。あれは長野でみつけたのです。あの貧乏徳利は長野近在にたくさんころがつてゐるのですよ。僕のみつけたのは桜枝町の

「さうです、貧乏徳利でせう。あれは長野でみつけたのです。あの貧乏徳利は長野近在にたくさんころがつてゐるの

ない話に熱中する場合ぢやありませんよ。誰がいつ長野へ出向いて魚則君を受取つてくるか、それを相談することが

「貴方は、貴方は明朝の一番列車で長野へ行つてくださるでせうね。お頼みしますよ。これはほんとに

「ハイ、旦那様も奥様もお嬢様も今朝方自動車でまつすぐ長野へおたちになりました」

もできないのだよ。自動車の用意をして下さい。長野まで全速力で走らすのだよ。何よりも温いたくさんの手が必要だ!

やうな黒い影が私の目をかきみだすよ。おお私達は長野へ走らなければならないのだよ。一分の猶予もできないのだ

や上田の城址をすぎて、夜もとつぷり落ちてから長野へついた。

新らたに栗谷川浩平を加へた車は一線に長野へ向けて走つていつた。蒲原氏はめつたに外出することもなかつ

警察行きを避けようとする激しい気持が人々に分つた。愈々長野といふ声をきくと蒲原氏は次第にそわそわしはじめて、「とにかく、

自動車が長野へはいると、蒲原氏の落付きのない様子から、なんとかして

一本や二本使つてゐると言つたことから、長野近辺の山家には今でもこんな徳利が沢山あつて毎日の生活に使

蒲原家に使はれてゐた戸隠生れの女中と、やつぱり長野近在で鬼無里といふ村落から来てゐた女中が噴きだして、その徳利なら

温泉といへば、長野から近いところに、湯田中、渋、発哺、上林、地獄谷、熊の湯なぞのひとかたまり

浩平の話によると、長野から三四時間の旅程で、すでに越後の温泉ではあるが、信越国境を

反対のあらうわけもなく、そこで、この一行は翌朝早々長野をあとにして、今は淋れた往昔の温泉地へと出発し

奈良

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てゐるところで全く都人士の訪ふ者がない。そのくせ奈良朝の頃には京と奥州を結ぶ道筋に当つてゐたところで、

松山

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といふばかりで特別奇も変もない風景であるが、松山鏡の伝説の地と伝へられてゐるところで全く都人士の訪ふ者が

て小憩するひまもなく、蒲原氏は早速一同をうながして松山鏡の伝説の地へ散歩にでかけた。その遺跡は温泉から一里あまり

小諸

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にも殆んど見向きもしなかつた。車は浅間山麓を走り、小諸や上田の城址をすぎて、夜もとつぷり落ちてから長野へついた

東京

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て流しへ坐ると、腕を静かに洗ひはじめて、東京の方には野暮くさい田舎女がさだめし奇妙なことでせうぞいと言ひ

づと挨拶を交すやうなことにもなり、旦那はまあ東京の方ですとの、といふやうな身の上話に類似のことも言ひあつ

の広大な杜へでた。一夜明けた早朝には愈々東京へ帰る予定になつてゐたので、今日限りこの山々も谷も杜