あとがき(『宮本百合子選集』第二巻) / 宮本百合子
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一九二三年の夏じゅうかかって執筆され、書き上ってから北海道の新聞にのせられた。スカンジナヴィア文学の専攻家でブランデスやハムスンを日本に紹介
ハムスンを日本に紹介した宮原晃一郎氏が、故郷である北海道の新聞へ何か作品をということで書き出したものだった。このたび思いがけ
に関心をひかれその春から秋急にアメリカへ立つまで北海道のアイヌ部落をめぐり暮した作者にとって公然と行われた朝鮮人虐殺は震撼
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「渋谷家の始祖」は一九一九年のはじめにニューヨークで書かれた。二十一歳になった作者が、めずらしく病的で陰惨な一人の
ニューヨークのようなところに生活しているとき、若い作者がなぜその人として
たと思われる。一九一八年の十二月ごろから、作者はニューヨークで、のちに結婚したペルシア語の専門家であるひとと知り合った。結婚に
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、「古き小画」はまるで新聞小説ではない。古代ペルシアの英雄ルスタムとその息子との悲劇の、謂わば古風なものがたりであり、文体
がよせられている。エクゾチシズムが濃い。しかしテーマは、古代ペルシアの王と諸公(英雄たち)の運命を支配していた封建的な関係。
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「渋谷家の始祖」は一九一九年のはじめにニューヨークで書かれた。二十一歳に
たということは微妙なことだったと考えられる。「渋谷家の始祖」の主人公が病的であった原因は、富裕な階級の未亡人
た。結婚にまで進んだ恋愛の初期に、作者が「渋谷家の始祖」のような題材に着目した点が注意をひく。その
たろうか。時を経た今考えてみると、この「渋谷家の始祖」のモティーヴはきわめて心理的だったと思われる。一九一八年の十二
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公然と行われた朝鮮人虐殺は震撼的衝撃であった。亀戸事件、大杉事件どれ一つとっても権力の野蛮と惨虐が身にせまっ
子供の虐殺。各地における朝鮮、中国労働者の虐殺。亀戸事件などは、人種的偏見と軍人・右翼の暴力に対する心からの憎悪を