ロンドン一九二九年 / 宮本百合子

ロンドン一九二九年のword cloud

地名一覧

オックスフォード

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燈には黒字で「トインビー・ホール」。トインビー・ホールはオックスフォードおよびケムブリッジ大学卒業生によって経営される知らぬ者のない英国セットルメント事業の

――ここで働いている方たちの食堂です。(オックスフォードやケムブリッジ大学には、月千五百円つかう学生だってある。)

何よりも英国の紳士気質だ。ゆえに努めてイートン、オックスフォード、ケンブリッジ等の教育振を視察して行きたいと思うがどうでありましょう。

山の手

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喉の奥を引っかいた。そういう空気を押し破って下町から山の手に、山の手から下町へ陸続進む乗合自動車の運転手はどれも若い、壮年だ。

を引っかいた。そういう空気を押し破って下町から山の手に、山の手から下町へ陸続進む乗合自動車の運転手はどれも若い、壮年だ。白っぽいうわっ

山の手の公園ケンシントン・ガーデンにもこういう池があった。午後その池のおもては

ベルファスト

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ベルファストでは英国労働組合が大会開催中だ。議長ベン・ティレットがした演説にはこう

モスクワ

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早びけかにして来るんだろう。しかし、その目でモスクワを見て来た日本女はロンドン人のように忍耐強くない。

、芸術、工業の知識普及のためのクルジョーク(組)。モスクワではあらゆるけちな労働者クラブにさえ満ち溢れるそれらのものを、唯一つの

死海

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を得た。死海協約でおよそ八十億ポンドの塩を英国は死海から儲けるであろう。パレスタインで農業をしていた先住アラビア人は多く土地を

ロンドン

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ロンドン一九二九年

巴里。    ロンドン。   リオン。    マルセーユ。

白エナメルの計重器の上にあった。いまそれはロンドンのただなかにある。ホテルの古風なセセッション式壁紙の根っこに置いてある。

ロンドンは八月の太陽の下に都市計画のない大都市の街筋をひろげている。

八月のロンドンの空気は乾燥している。毛織物を食う虫はこの空気中では湧かない

をひかえて、日本女はしばらく近代魚類体中の飛行機をロンドンに於て生新に感覚し、それからそれを引っくりかえし愛情を感じつつ皆食べて

――休みの土曜の午後か。ロンドンの困窮せる人はすでにこの習慣を知っているのだろう。だから勤めの

或る門の前では巡査が立っている。夏で「ロンドンは田舎っぺえのロンドンになった」ので公園の鉄柵は塗かえ中だ

は巡査が立っている。夏で「ロンドンは田舎っぺえのロンドンになった」ので公園の鉄柵は塗かえ中だ。繩を張って

がいた。そこのにれ、かしは大木だ。りすはロンドンでも野獣らしい敏捷さでしっぽで釣合をとりとり頭を逆さまにしてにれ

で英国の利害を主張している時、それを支持するロンドン中流男女は、自然的公園の樹蔭をスコッチ・テリアをつれパイプとともに散策し

腹ん這いに突伏して眠った。減った靴の裏へロンドンの八月の草がそよいだ。グリーン公園の横通りでロスチャイルドが数十万ポンド

の右腕の表情でわかる。彼女は近代女性の感覚で、ロンドン有数な喫茶室の第一ヴァイオリンひきという自分の職業を理解しているの

が貼られている。伯爵某々が下賜された土地(ロンドン市中央よりほぼ一時間)小住宅とともに十五年年賦で分譲する。希望者

日向では婆さん連が並んで、黙って、ロンドンの紫外線少い夏を吸い込もうとしている。日向だと空気中に何だか

ピカデリー広場行の乗合自動車はかなくそでつまったような黒いロンドンを一方から走って来てビショップ町の出入口から心配げな顔つきをした

ロンドンの勤労者諸君! 諸君はロンドン地下電車に積み込まれて疾走しつつ、頭の

パイプをたたき落されないだけの平安だのに、諸君はさながらロンドンを所有しているかの如く平安なのだ。

なければならぬ。そして、山の手人は食慾を失い、ロンドンが踏んまえている者の鼻面へオーデコロンをぬった鼻面を擦りつけさせられなければ

幅ひろい雨がロンドンに降った。夏の終りだ。ペーヴメントを濡し薄い女靴下をびっしょりにし

ロンドンのPELL・MELLは有名なクラブ通りである。各々のクラブは会員共通の利害

ロンドンの全人口が毎土曜ゴルフをやりに出かけるのではない。証拠に、こう

、世界に於て最も衛生施設の行届いた都会としてロンドンをあげるだろう。巡回看護の制度はロンドンで最初に制定されたと。ロンドン

た都会としてロンドンをあげるだろう。巡回看護の制度はロンドンで最初に制定されたと。ロンドンで病院と云えばほとんど無料病院の同義語

巡回看護の制度はロンドンで最初に制定されたと。ロンドンで病院と云えばほとんど無料病院の同義語ではないか、と。たしかにイギリス人

成功者となった。慈善的催しを組織する専門職業婦人がロンドンに数人ある。彼女もその一人である。美しい耳飾をたらし、白い歯

八月某日。デイリイ・ミラアに面白い記事がある。ロンドン市の「疲れた婦人の休養所」の一つがX嬢その他数人

よって数年来経営されて来た。ところが最近ロンドンに疲れた女が殖え、よく繁昌する。一日退職軍人その他から成る委員

M氏夫妻は日本に於ける彼の店がつぶれた後ロンドンへ来た日本人である。

。M氏は多く読み、英国労働組合内に友人を持ち、ロンドンに於けるインド留学生集会に招かれて自治論を慫慂した。

ロンドンでなら、しかし、いつでもM氏夫妻に会えるとは限ってない。国際

ロンドンにおれば、また相当来客がある。M氏程まだ充分イギリスを内臓へ吸収

ある夕方、日本女がその客間に坐っている。彼女はロンドン表通りに於て他人である自分を感じる。すなわち、英国人の公平な勝負という

少年団大会出席のためロンドンへ出て来た大男の団長が実用的なことは靴とひとしい説教の間に

公園か、とにかく彼の週給額を半径となし得るだけ遠くロンドンから飛び去る。

ロンドンで自動車運転許可は郵便局へ五シリング払い込めば貰える。だが運転すべき自動車その

から立ち上って「ここがオックスフォード通。只今通りすぎつつあるのはロンドンの最もしゃれたレストランの一つ、フラスカテイであります。フラスカテイー!」叫んでいる

つ、フラスカテイであります。フラスカテイー!」叫んでいる時にロンドンが夜になった。

に照らされた白い鉄骨アーケードの下を徐行した。古代ロンドンの城門の一つをくぐった。

て数百年、夜じゅう起きていた。月は片眼のロンドンでデイリー・メイル社の電気広告の真上を歩いている。

に働かす活溌な想像力はパイプのやにの中にさえ待ち合わさぬロンドンの一流から四流までの劇場で、幕が下り、また幕が上り、舞台

巴里

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巴里。    ロンドン。   リオン。    マルセーユ。

四時間前、鞄は巴里の飛行会社で白エナメルの計重器の上にあった。いまそれは

で自然だ――自然であるようにつくられている。巴里で公園は人と衣裳の背景としてできている。そこの並木路

考えるべきかということを第一に学びはせぬ。巴里で日本人は俺が考えたいように物を考えても苦情の云い手は

巴里に日本人が沢山いる。巴里で日本人はいかにフランス人が考えるように物を考えるべきかということを第

巴里に日本人が沢山いる。巴里で日本人はいかにフランス人が考えるように物を考える

英国で日本人は違う。日本人のまんまさすらい廻って巴里でのように皮膚黄色き異国情調を売っておられぬ。英語の夢