日は輝けり / 宮本百合子
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しないことであった。彼は、病院と父親のいる小石川の家との間を、いろいろな用件で往復していたのである。
居眠っているような姿で、思い沈んだまま孝之進は小石川のはてまで、運ばれて行った。停留場のすぐ傍から、家までの道路
浩は、ただ一度、小石川からまた聞きに姉の様子を聞いたぎりなので、心もとなく思っていただけ
の遣りくりに心をなやましているかが思いやられた。小石川へ行って僅かでも、お咲親子がこちらにいれば当然かかるべき費用の
が気違いになるということは信じられなかった。彼は小石川へ聞きに行った。そこにもまた浩の得たと全く同様な驚愕と
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に浩が、索ねて行った時分には、彼は北海道の鯡場行きの人足の一人となって、親分に連れられ、他の仲間
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を踏み出そうとしたときに起った、政治上、社会上の大津浪が、家老という地位をも、先祖伝来の家禄をも、さらって
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せていた。骨盤結核という病名で、お咲は神田のS病院に入院して手術を受けたのである。
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東京に行ったところで、何一つ自分を喜ばせるものはないのだと
からの手紙を受取り、返事を遣った。が、それが東京へ着いたか着かぬに、彼の最も信用していた男が、
庸之助は、あの日に東京を立つと、ほとんど夢中で故郷の小さい町まで運ばれて行った。そして
は――。どんな人間でも匿う穴や、小道の多い東京へまた戻る決心をした。
東京へ一足踏み込むと同時に、すべてを諦めてどこかの職工にでもなろう
「就職? それじゃあ東京に出て来たと見えるなあ。Sの事務に入ろうとしているの
浩は、非常に不安であった。この東京の中に、次第に悲境に沈みつつある? 自分の親しい友達がいる
東京の大通りのかげには、よく思いがけないほど狭く、ごちゃごちゃと穢い通りがある
は乗らなかった。が、何にしろちょっとしたことまで東京の高瀬へ問い合わせては返事を待ってしなければならないようなことが
金の談判を始めた。けれどもなかなか埒が明かない。東京の商業学校を卒業して来て、西洋風の机に向い、西洋風な帳面
れるのが心外であった。そしてそればかりではなく、東京のことを訊かれるのを厭っている様子が彼女に不審を起させた
久し振りで東京へ行ったことだから、息子のこと、娘のことをあれこれ聞くのを
、一日に幾度となく繰返された。お咲は、東京の良人のところへ何と詫びを云ってやって好いか分らなかった。
東京へ返事を遣るに就いても、彼はずいぶん頭を悩ました。浩へ
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上京などで、せわしい日を送っている浩は、庸之助が浅草の一隅で、そんな風にしていようとは、もちろん知ろうはずもなかった