日比谷 上野 東京

立ってバスにのって用達しに出かけて昼ごろになり、日比谷の公会堂のよこの更科を通りかかったら、青々と蔦をからめた目かくしをあふれ

に或る悲しさがあるような雰囲気である。そのような上野独特の旅客が山下まで溢れた中には、旧盆に故郷へかえる男女の

出入りする旅客たちとはちがって、ふだんでさえ上野へ着き上野から東北に向ってゆく旅人たちにはどことなく生活の陰翳が濃い。

東京駅を出入りする旅客たちとはちがって、ふだんでさえ上野へ着き上野から東北に向ってゆく旅人たちにはどことなく生活の陰翳

が急騰していることを報じていたことは、その上野駅頭の大群集の写真との対照で、今なお生々しく私たちの感銘に刻ま

のであったが、その中に何百人が、もう再び東京にはかえらない体となって交っていたことだろう。田舎から出た