仙台 神田 東京

ない。彼の留守宅も戦火にやかれ、その未亡人は仙台の実家にもどっている筈であった。

で、仙台へ原稿依頼にでかけることになったので、仙台には神尾の細君が疎開しており、どっちみち訪問すべき機会であるから

出版社の出版部長をつとめていた。ちょうど社用で、仙台へ原稿依頼にでかけることになったので、仙台には神尾の細君が

矢島は社用で神田へでるたび、いつもするように、古本屋をのぞいて歩いた。すると、

「実は神田の古本屋で、神尾君の蔵書を一冊みつけましてね、買いもとめて、

矢島は本を買った神田の古本屋へ赴いて本の売り手をきいてみた。帳簿になかったけれど

しましたから、二十年の二月のことで、まだ東京には大空襲のない時でしたの」

の蔵書の中へ置き残し、自分の本を代りに貰って東京へ戻った。

矢島は東京へ戻ると、タカ子にたずねた。

もう東京があらかた焼野原となった初夏の一日、その人が自宅附近を歩いて