竹藪の家 / 坂口安吾
地名一覧
武蔵野
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郊外の(一足踏み出せば、もはや涯も無い武蔵野の田園が展けてゐる――)この傾いた破れ長屋に居候を始めてから
と反対の方角には、已に其処から広茫とした武蔵野が遮る物もなく展けて見えるのであつた。
広茫とした武蔵野は一見平坦な広野に見えて、実は一面になだらかな起伏を隠してゐる
。斯うして、莫大な明るさのみの張り詰めてゐる広い武蔵野の麦畑を、二人は黙々として一周したわけであつた。
泥鰌がゐた! 麗かな晴れた日のことで、武蔵野を灌漑する小さな流れに沿ひ乍ら孤り目当なく歩いてゐた時の事
瞬間のうちに激しい嵐の唸り声を――それは遥かに武蔵野を遠く縹渺と吹き捲るもののやうに聴きとれたが――とりとめもない唯それ
狂ふ音をききながら、ただ飄飄と嵐のみ吹き渡る広い武蔵野を見るともなしに覗いてみた。――荒涼としたものである。
秩父
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こともなく眺め廻してみたかつたのだ。遠ければ秩父の山、近ければ空へ打ち込む欅の杜、それらの余白に低く幽かに
横浜
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、駄夫は愈々竹藪の家を去ることになつた。横浜の、広々と港の見える山上に住む一人の友が、暫く彼を泊めるで
顰め乍ら、このやうに晴れ渡る日、広々と海を見晴らす横浜はどんなに壮快であらうかと駄夫を羨しがつた。老婆も亦総江と
関西
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ほてつた顔をして、江戸前のいなせな言葉に関西訛りのアクセントが時々絡みつくせつかちな口調で、心安く二人へ話しかけるのを聞いて