浅草 品川 上野 隅田川

かで専ら穴掘りをやっているうちに戦争がすんだ。浅草の生家へ戻ってみると焼野原で、たった一人生き残った母親は、いつ

ではなくて育ちであった。痩せても枯れても浅草で育ったジンタのアンチャンであるから、輝かしいノスタルジイの発露であったワケで

フトコロに、二斗ほどの米と寝具一式リヤカーにつけて浅草の狸劇団を訪問した。二斗の米はコンミッションではない。自分

と、支配人兼文芸部長の品川一平が怒鳴りつけた。

といって品川一平はソッポを向いたが、彼は心眼によって、馬吉の非凡な

品川一平も心眼が狂っていたことに気がついた。

と、追いだされてしまった。なるほど品川一平の説は正論である。馬吉は正論に対しては感服を忘れぬ

ことはあっても、人にタカられないチャッカリ屋で、品川一平のアパートに居候をきめこんでいても、二斗の米は自分だけ

若い座員がコッピドク馬吉に往復ビンタをくらわせた。さすがに品川一平はゲラゲラ笑っていた。場末の役者ともなれば、根はそれ

彼はうまいことに気がついた。品川一平のアパートへ行く。監理人からカギをかりる。昨日まで同居してい

に一升メシを食らいやがって、こっちが持たねえよ。上野の地下道へ行きゃ、なんとかならアな、退歩しろよ」

ても、ひき合わないからである。バラバラにきざんで、隅田川へ捨てる、というワケにも行かない。よく切れる庖丁もあることだし