愛宕 比叡 鞍馬 加茂 京都 東京

ある。原に眞葛、川に加茂、山に比叡と愛宕と鞍馬、ことごとく昔の儘の原と川と山である。昔の儘の

所である。原に眞葛、川に加茂、山に比叡と愛宕と鞍馬、ことごとく昔の儘の原と川と山である。昔の

原に眞葛、川に加茂、山に比叡と愛宕と鞍馬、ことごとく昔の儘の原と川と山である。昔の儘の原と

さへ京は淋しい所である。原に眞葛、川に加茂、山に比叡と愛宕と鞍馬、ことごとく昔の儘の原と川と山で

てゐるのを見兼ねて「公、まづ這入れ」と云ふ。加茂の水の透き徹るなかに全身を浸けたときは齒の根が合はぬ位

ではない。への字烏、くの字烏である。加茂の明神がかく鳴かしめて、うき我れをいとゞ寒がらしめ玉ふの

暗い軒下にぶらぶらしてゐる。余は寒い首を縮めて京都を南から北へ拔ける。

ないのに、あの赤い下品な肉太な字を見ると、京都を稻妻の迅かなる閃きのうちに思ひ出す。同時に――あゝ子規は

年の今日に至る迄決して動かない。ぜんざいは京都で、京都はぜんざいであるとは余が當時に受けた第一印象で又最後の印象で

、明治四十年の今日に至る迄決して動かない。ぜんざいは京都で、京都はぜんざいであるとは余が當時に受けた第一印象で又最後

。此の大提燈を見て、余は何故か是れが京都だなと感じたぎり、明治四十年の今日に至る迄決して動かない。ぜんざい

町の柊屋とか云ふ家へ着いて、子規と共に京都の夜を見物に出たとき、始めて余の目に映つたのは

有史以前から深い因縁で互に結びつけられて居る。始めて京都に來たのは十五六年の昔である。その時は正岡子規

召し給へる桓武天皇の昔はしらず、余とぜんざいと京都とは有史以前から深い因縁で互に結びつけられて居る。始めて京都に

離されない。離されない以上は千年の歴史を有する京都に千年の歴史を有するぜんざいが無くてはならぬ。ぜんざいを召し給へ

、わかり易からぬ歴史上の疑問である。然し赤いぜんざいと京都とは到底離されない。離されない以上は千年の歴史を有する京都

とは思はなかつたらう。漱石が教師をやめて、寒い京都へ遊びに來たと聞いたら、圓山へ登つた時を思ひ出しはせぬ

子規と來て、ぜんざいと京都を同じものと思つたのはもう十五六年の昔になる。夏

ある夜着はつくらぬものゝ由を主人から承つて、京都はよく／＼人を寒がらせる所だと思ふ。

、果は蒲團に迄寒かつたのは心得ぬ。京都では袖のある夜着はつくらぬものゝ由を主人から承つて、

吹いて總身に※浸み出はせぬかと感じた。東京は左程に烈しい所である。此の刺激の強い都を去つて、突然

云ふ。余は中の車に乘つて顫へてゐる。東京を立つ時は日本にこんな寒い所があるとは思はなかつた。昨日

降らねば入らぬ。此の寒いのに膝掛を拾はれては東京を出るとき二十二圓五十錢を奮發した甲斐がない。