明暗 / 夏目漱石

明暗のword cloud

地名一覧

北海道

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「馬も存外安いもんですな。北海道へ行きますと、一頭五六円で立派なのが手に入ります」

横浜

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いうに適していた。ことに今朝母と子供を連れて横浜の親類へ行ったという堀の家族は留守なので、彼はこの愛嬌

昨日孫を伴れて横浜の親類へ行ったという堀の母がまだ帰っていなかったのは、

彼を唆のかしたかというと、寝起に横浜の女と番頭の噂さに上った清子の消息を聴かされたからであっ

霞が関

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には、真赤に咲いた日比谷公園の躑躅だの、突当りに霞が関の見える大通りの片側に、薄暗い影をこんもり漂よわせている高い柳などが、

倫敦

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が、みんなに変な顔をしてじろじろ見られながら、倫敦の群衆の中で、大男の肩の上へ噛りついていたんだ

日比谷公園

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津田が貰って帰ったこの見本には、真赤に咲いた日比谷公園の躑躅だの、突当りに霞が関の見える大通りの片側に、薄暗い影をこんもり

京都

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「うんこの前京都へ行った時にも何だかそんな事を云ってたじゃないか。

結婚後家計膨脹という名義の下に、毎月の不足を、京都にいる父から填補して貰う事になった一面には、盆暮の賞与

悪口を云いたがる癖に、いつか永住の目的をもって京都に落ちついてしまった。彼がその土地を余り好まない母に同情して

年を神戸で費やした後、その間に買っておいた京都の地面へ、新らしい普請をして、二年前にとうとうそこへ引き移った

彼にそれだけの都合をつける余裕はほとんどなかった。もし京都から為替が届くならばとも考えたが、まだ届くか届かないか分ら

は懐都合で見合せなければならなかったのである。まして京都から多少の融通を仰いで、彼らの経済に幾分の潤沢をつけて

「芝居はどうでもいいが、由雄さん京都の方はどうして、それから」

「京都から何とか云って来ましたかこっちへ」

お延の両親は津田の父母と同じように京都にいた。津田は遠くからその書きかけの手紙を眺めた。けれどもまだ

お延はその晩京都にいる自分の両親へ宛てて手紙を書いた。一昨日も昨日も書き

を解決したいという切な希望もあった。要するに京都へ手紙を書けば、ざわざわしがちな自分の心持を纏めて見る事が

までを器械的に書き了った後で、しばらく考えた。京都へ何か書いてやる以上は、是非とも自分と津田との消息を的

でも書生でもなく、ちょうどその時彼女と同じように京都の家へ来ていた由雄であった。

始めて京都で津田に会った時の事が思い出された。久しぶりに父母の顔を

延の新世帯が夫婦二人ぎりで、家族は双方とも遠い京都に離れているのに反して、堀には母があった。弟も

。その不満が、何か事さえあると、とかく彼女を京都にいる父母の味方にしたがった。彼女はそれでもなるべく兄と衝突する

「また京都から何か云って来たのかい」

また冷淡であり得るはずがなかった。二度目の請求を京都へ出してから以後の彼は、絶えず送金の有無を心のうちで

父の方から、お秀の許へは母の側から、京都の消息が重に伝えられる事にほぼきまっていたので、彼は

かかったのである。そうして自分の誤解をそのまま京都へ伝えてしまったのである。今でも彼女はその誤解から逃れる事

延を多少悪く見ていたお秀は、すぐその顛末を京都へ報告した。しかもお延が盆暮の約束を承知している癖に

。津田が困る。今までの行がかり上堀に訳を話す。京都に対して責任を感ずべく余儀なくされている堀は、津田の

堀をこの事件の責任者ででもあるように見傚して、京都の父が遠廻しに持ちかけて来るのがいかにも業腹であった。そんなこんなの

「兄さんのお腹の中には、あたしが京都へ告口をしたという事が始終あるんでしょう」

手紙は夫婦の間に待ち受けられた京都の父からのものであった。これも前便と同じように書留になっ

「京都でもいろいろお物費が多いでしょうからね。それに元々こちらが悪いん

「兄さんはあたし達が陰で、京都を突ッついたと思ってるんですよ」

立て替えて上げるお金ではありませんよ、兄さん。良人が京都へ保証して成り立った約束を、兄さんがお破りになったために、

という恐れ、二つのものが原因になって、なるべく京都の方面に曖昧な幕を張り通そうとした警戒が解けた。そうし

た問題を平気で取り上げた。二人はいっしょになって、京都に対する善後策を講じ出した。

を引き締めた。きっとお秀が何かするだろう。すれば直接京都へ向ってやるに違いない。そうしてその結果は自然二人の不利益と

二には京都の事が気になった。軽重を別にして考えると、この方

「解ってるって、そりゃ京都の事だろう。あっちが不首尾になるという意味だろう」

で解ってるんだから、もし不都合な事があれば、京都へ知らせてやるだけだ。用心しろ」という意味の言葉を思い出した

さんは重に京都の方を心配しているの。無論京都はあなたから云えばお父さんだから、けっして疎略にはできますまい。ことに

よ。しかし主意は少し違うんです。お秀さんは重に京都の方を心配しているの。無論京都はあなたから云えばお父さんだから

「そりゃおれにかけ合ったって駄目だ。京都にいるお父さんかお母さんへ尻を持ち込むよりほかに、苦情の持ってきどころ

からまた印気を走らせた。今度はお秀の夫と京都にいる両親宛の分がまたたく間に出来上った。こう書き出して見ると、

長崎

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のは津田の父の弟であった。広島に三年長崎に二年という風に、方々移り歩かなければならない官吏生活を余儀なく

広島

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藤井というのは津田の父の弟であった。広島に三年長崎に二年という風に、方々移り歩かなければならない官吏

神戸

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て実業に従事し出した。彼は最後の八年を神戸で費やした後、その間に買っておいた京都の地面へ、新らしい普請

福岡

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が済むとすぐ連れられて福岡へ立ってしまった。その福岡は長男の真弓が今年から籍を置いた大学の所在地でもあった。

嫁に行った次女は、式が済むとすぐ連れられて福岡へ立ってしまった。その福岡は長男の真弓が今年から籍を置いた

神田

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彼は神田にいる妹の事をちょっと思い浮べて見たが、そこへ足を向ける気

東京

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頭は勢い彼の父を離れなかった。東京に生れて東京に育ったその父は、何ぞというとすぐ上方の悪口を云いたがる

彼の頭は勢い彼の父を離れなかった。東京に生れて東京に育ったその父は、何ぞというとすぐ上方の

津田の父と違ってこの叔父はついぞ東京を離れた事がなかった。半生の間始終動き勝であった父に

かからない彼自身は、最初から動かなかった。彼は始終東京にいて始終貧乏していた。彼はいまだかつて月給というものを

廻ったりして、始終忙がしそうに見えた彼は、とうとう東京にいたたまれなくなった結果、朝鮮へ渡って、そこの或新聞社へ雇われる

「こう苦しくっちゃ、いくら東京に辛防していたって、仕方がないからね。未来のない所

、遠くに離れている両親をもった彼女から云えば、東京中で頼りにするたった一人の叔母であった。

堀は、物価の騰貴、交際の必要、時代の変化、東京と地方との区別、いろいろ都合の好い材料を勝手に並べ立てて、勤倹一方の

「そんな所は東京にないよ」

れた「年寄に心配をかけてはいけない。君が東京で何をしているか、ちゃんとこっちで解ってるんだから、もし不都合

事よ。今どこにいらっしゃるかっていうのよ。東京か東京でないか」

今の事よ。今どこにいらっしゃるかっていうのよ。東京か東京でないか」

が突然夫人の口から点出された。一日がかりで東京から行かれるかなり有名なその温泉場の記憶は、津田にとってもそれほど

小林と会見の場所は、東京で一番賑やかな大通りの中ほどを、ちょっと横へ切れた所にあった

です、頭から尻まで嘘の皮なんです。叔父は東京にいる方が多いばかりか、僕は書生代りに朝から晩まで使い歩きを

、午後は画を習いに行くがいい。今に銀行を東京へ持って来ると外国語学校へ入れてやる、家の始末は心配するな

のできそうもないその帽子の主人は、彼の言葉遣いで東京生れの証拠を充分に挙げていた。津田は服装に似合わない思いの

災難に会わないとも限らなかった。けれどもそこには東京ものの持って生れた誇張というものがあった。そんなに不完全なもの

思った時に立っちまうに限るよ。これでぐずぐずして東京にいて御覧な。ああつまらねえ、こうと知ったら、思い切って今朝立っ

「そうさ。だが東京も今頃はこのくらい好い天気になってるんだろうか」

いや多分はそうなりそうだ。じゃ何のために雨の東京を立ってこんな所まで出かけて来たのだ。畢竟馬鹿だから?

も夢、これから先も夢、その夢を抱いてまた東京へ帰って行く。それが事件の結末にならないとも限らない。いや

この夢見たようなものの続きを辿ろうとしている。東京を立つ前から、もっと几帳面に云えば、吉川夫人にこの温泉行を勧め

ていない彼女、想像の眼先にちらちらする彼女、わざわざ東京から後を跟けて来た彼女、はどんな影響を彼の上に起すの

三カ条のうち彼はただ第三だけを目的にして東京を立った。ところが汽車に揺られ、馬車に揺られ、山の空気に冷やさ

「東京からおいでですか」

「でも私への御土産を持って、わざわざ東京から来て下すったんでしょう」

渋谷

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したなり話をほかへそらした。真事は戸田だの渋谷だの坂口だのと、相手の知りもしない友達の名前を勝手に並べ立て

浅草

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もったいらしくその上へ翳したりした。お延が津田と浅草へ遊びに行った時、玩具としては高過ぎる四円近くの代価

銀座

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されている広告用の小冊子めいたものが、二人で銀座へ買物に行った初夏の夕暮を思い出させた。その時夏帽を買いに