秩父 本郷 鎌倉 愛宕山 江戸 博多 九州 仙台 東京 日比谷 新橋 品川 上野 神田 隅田川

れるくらい昵懇な間柄となった。運命は大島の表と秩父の裏とを縫い合せる。

に何らの交渉もない。縫い合わされた大島の表と秩父の裏とは覚束なき針の目を忍んで繋ぐ、細い糸の御蔭である

「じゃ坂を上って、本郷の方へ行きましょう。僕はあっちへ帰るんだから」

僕が転地の費用を担任しようじゃないか。逗子でも鎌倉でも、熱海でも君の好な所へ往って、呑気に養生する。

だろうか。望遠鏡の眼鏡は一寸の直径である。しかし愛宕山から見ると品川の沖がこの一寸のなかに這入ってしまう。明治の四十年

媚びて一世に附和する心底がなければ成功せぬ。江戸風な町人はこの解脱法を心得ている。芸妓通客はこの解脱法を

兄は糸織の小袖に鉄御納戸の博多の羽織を着ている。

次に渡ったのは九州である。九州を中断してその北部から工業を除けば九州は白紙となる

次に渡ったのは九州である。九州を中断してその北部から工業を除けば九州は白紙となる。炭礦の煙り

である。九州を中断してその北部から工業を除けば九州は白紙となる。炭礦の煙りを浴びて、黒い呼吸をせぬ者は人間

て見ようと云って抛り出された時、道也はまた飄然と九州を去った。

ござんすと云って、甲斐甲斐しく荷物の手拵を始めた。九州を去る時にもその顛末を云って聞かせた。今度はまたですかと

さ、面倒だからいい加減に挨拶をして置いたら先生すぐ九州へ立って行った。それから二週間ほどして社へ出ると書記が野添

「近頃は出掛けるかね」と云う声がする。仙台平をずるずる地びたへ引きずって白足袋に鼠緒の雪駄をかすかに出した

「へえ」と仙台平は感心している。

中学を二三箇所流して歩いた末、去年の春飄然と東京へ戻って来た。流すとは門附に用いる言葉で飄然とは徂徠

道也は飄然と東京へ戻ったなり再び動く景色がない。東京は日本で一番世地辛い所である。田舎にいるほどの俸給を受け

三たび飄然と中学を去った道也は飄然と東京へ戻ったなり再び動く景色がない。東京は日本で一番世地辛い所

酔興を三たび重ねて、東京へ出て来た道也は、もう田舎へは行かぬと言い出した。

「だから心配になるんですわ。いくら東京にいるときめたって、きめただけの思案じゃ仕方がないじゃありません

しかしおれの癇癪は……まあ、いいや。どうにか東京で食えるようにするから」

「だって毎年年始状を御寄こしになる足立さんなんか東京で立派にしていらっしゃるじゃありませんか」

「なに東京だって、あるんだよ。学校ばかりじゃない。世の中はみんなこれなん

一人佗びしく暮らしている。卒業をすれば立派になって、東京へでも引き取るのが子の義務である。逃げて帰れば親子共餓え

「東京へ来てからでも、こんなくだらん事をしないでも、どうに

金の代りに金より貴いあるものを懐にしてまた東京へ帰って来る。とも誰も思うものはあるまい。世は様々で

ぞ空いた所はあるまいかと、さっきからちょうど三度日比谷を巡回した。三度巡回して一脚の腰掛も思うように我

行って貰いたいのである。それでなくても、せんだって日比谷で聞いた高柳君の事をちょっと好奇心から、あたって見たいのである

天気がよくっても、散歩なんかする暇はない。今日は新橋の先まで遺失品を探がしに行ってその帰りがけにちょっとついでだから、

「また新橋の先まで探がしに行って、拳突を喰ったんじゃないか

「新橋どころか、世界中探がしてあるいても落ちていそうもない。もう

時にだいぶ長話しをした。どうだ君。これから品川の妙花園まで行かないか」

の眼鏡は一寸の直径である。しかし愛宕山から見ると品川の沖がこの一寸のなかに這入ってしまう。明治の四十年を長い

暇なんかないです。不相変多忙でね。今日はちょっと上野の図書館まで調べ物に行ったです」

そう、少しなら、してもいい。どっちの方へ。上野はもうよそう。今通って来たばかりだから」

もう一つあるんですがね。今日社の帰りがけに、神田を通ったら清輝館の前に、大きな広告があって、わたしは吃驚さ

は夏がいい。夏のいい月夜に屋根舟に乗って、隅田川から綾瀬の方へ漕がして行って銀扇を水に流して遊んだら面白い