鏡地獄 / 牧野信一

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地名一覧

牛込

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父が死んでから間もなく、彼が東京・牛込に間借りをしてゐた頃、周子の母が来て、

ローマ

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「あの、マーク・アントニーといふローマの大将ですね、あの人は手に負へない贅沢な放蕩家だつたが、

伊豆

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、自分の両親と醜い云ひ争ひをして、間もなく伊豆の方へ逃げ伸び、山蔭の、畑の見張り番でも住みさうな茅屋に

たが、そのうちの通俗的でないものだけを彼は、伊豆に逃げのびた頃から、巧く母に断つて、書店から直接彼宛に郵送さ

神楽殿

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、この寒さも厭はず、この村社の急拵への神楽殿にも似た部屋に、幕を引き回らせて、筒抜けたやうな顔を

下谷

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。――東京に来てから二度目の家であつた下谷の寓居を、突然引き払つて芝に移つたのは、前の年の暮

移つてから、もう夏になつてしまつた。――下谷から移る時にはあんなに好く働いた賢太郎も、高輪を引きあげる時には

静岡

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文案を二日も三日も考へて、断念したり、静岡のお蝶を訪れて大遊蕩を試みようなどと思ひ、秘かにその資金の画策

東京

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「う、うん――君、何も東京に住ふ必要はないぢやないか。無駄ぢやないか? マザーもさう

稀に東京(この辺では、市内へ行くことを東京へ行く、といふところであつた。)あたりから遊びに来た者は

かつた。滅多に訪れる者などはなかつたが、稀に東京(この辺では、市内へ行くことを東京へ行く、といふところ

暮れかゝつて行く外の景色を眺めた。木立の多い東京郊外の夏であつた。夕陽に映えてゐた木々が、見る間に

「東京にでも行つて住ふことになつたら、どうするんだらう。」

に移つて来たのは晩春の頃だつた。――東京に来てから二度目の家であつた下谷の寓居を、突然引き払

「随分、引ツ越し好きだね――折角、東京に来たといふのに、さつぱり落着かないぢやないか。」などと知合

父が死んでから間もなく、彼が東京・牛込に間借りをしてゐた頃、周子の母が来て、

「買つたのよ、この間――東京で。」

に断つて、書店から直接彼宛に郵送させた。東京に住む現在でも、それ等は附箋がついて回つて来た。

「東京も面白くないし、また此方にでも舞ひ戻らうかな、だが

やらうかな。)――「だけど勉強なら何も東京にばかり居る必要もない気がするんで、当分吾家に帰らうかなんて

するのが癖になつたね、お酒を飲むと、東京などで、外で遊んだりするのは、お止めよ、危いぜ。」

「一度び、東京へ出ずれば、ですね――僕、さう、おめおめと帰つて来やし

何んにもならないからな……第一、東京へ帰つてからの暮しが出来なくなる……あつちには、あつちで、

彼は、毎日のやうにこんなことを呟きながら東京郊外の陋屋で碌々とその日その日を送つてゐた。医家に厳禁

大崎

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間もなく彼女の一家が、大崎からこゝへ移つて来た。彼は、彼女の母と(何でも